Sentinelシリーズに迫る②~Sentinel-4, 5, 6について~
前回のコラムでは、Sentinelシリーズ全体の概要と、Sentinel-1, 2, 3について取り上げました。これらはすべて2機の同一衛星でコンステレーションを形成するミッションであるという共通点がある一方で、それぞれSAR衛星・光学衛星・マルチセンサ環境観測衛星であり、異なる役割を持っています。 今回はSentinelシリーズの後半にあたるSentinel-4, 5, 6の特徴をご紹介します。
基本情報
・MTG-S1衛星に搭載されたセンサ
・運用機関はESAとEUMETSAT
・後継機が、2030年代に打ち上げ予定のMTG-S2衛星に搭載される予定
| 打ち上げ日 | 2025年7月1日 |
|---|---|
| 運用状態 | 運用中 |
観測目的
静止軌道から欧州および北アフリカの一部を対象に、大気質を継続的に監視します。1時間ごとに大気中の微量ガスや汚染物質の濃度を測定し、ほぼリアルタイム(1時間以内)でデータ配信が可能です。極軌道上のSentinel-5のミッションを補完する役割を担い、大気汚染のモニタリングや予測、健康警報の発令などに活用されます。
センサ詳細
Sentinel-4 = UVN(紫外線・可視光・近赤外線)イメージング分光計。太陽光や、地表・大気からの反射光の中に残る微量ガスの痕跡 (footprint) を解析し、二酸化窒素、オゾン、二酸化硫黄、ホルムアルデヒドなどの量を推定します。
🄫ESA
基本情報
・MetOp-SG-A衛星に搭載されるセンサ
・運用機関はESAとEUMETSAT
・Sentinel-5P(※後述)の後継機
・MetOp-SG-Aシリーズに継続搭載される予定であり、最低21年間のミッション期間が確保される
| 打ち上げ日 | 2025年8月12日 |
|---|---|
| 運用状態 | 運用中 |
観測目的
全球を対象に、大気中の微量ガスやエアロゾルに関するデータを日次で収集します。太陽同期軌道からモニタリングを行い、静止軌道から観測するSentinel-4ミッションを補完する役割を担います。Sentinel-4と5、二種類の気象観測衛星を異なる軌道中に配置することで、気象予測や気候分析に向けたデータ提供の有効性を高める狙いです。大気汚染物質の濃度や気候変数、成層圏オゾンなど、大気組成に関するデータを提供します。
センサ詳細
Sentinel-5 = UVNS(紫外線・可視光・近赤外線・短波赤外線)イメージング分光計。前述のUVN分光計に加えて短波赤外線も測定できることで、観測対象が二酸化窒素・オゾン・二酸化硫黄・ホルムアルデヒドに加えて、メタン・一酸化炭素・二酸化炭素なども可能となった。
🄫ESA
基本情報
・別名:Sentinel-5 Precursor
・1基で構成されたミッションで、大気観測用の受動型光学センサTROPOMIを搭載した衛星
・運用機関はESAであり、TROPOMIへの資金提供はESAとオランダが共同で行った
・2012年4月に運用が終了したENVISAT、その同時期に打ち上げられたAURA、および2020年代半ばに開始されるSentinel-4/5ミッションの間で生じた、全球大気データの空白を補うために計画された
| 打ち上げ日 | 2017年10月13日 |
|---|---|
| 運用状態 | 運用中 |
観測目的
大気観測に特化した初のコペルニクス計画ミッション。二酸化窒素、オゾン、ホルムアルデヒド、二酸化硫黄、メタン、一酸化炭素、エアロゾルなど微量ガスの分布を把握し、得られたデータは大気質、オゾンおよび紫外線放射、ならびに気候の監視・予測に活用されます。
主な搭載機器
TROPOMI / TROPOspheric Monitoring Instrument (UVNSイメージング分光計)
観測対象(紫外–可視–近赤外–短波赤外(UV–VIS–NIR–SWIR))および基本的な観測機能はSentinel‑5 UVNS 分光計と同一。7.0km×3.5kmの高解像度を誇り、都市上空の大気汚染も観測可能です。TROPOMI による実運用実績を基に、本運用センサであるSentinel‑5 UVNSが開発されました。
🄫ESA
基本情報
・レーダー高度計衛星
・ESA、EUMETSAT、NASA、NOAAが実施する欧米共同のミッション
・各衛星の打ち上げ日および運用状態は以下の通り
| 6 Michael Freilich(6A) | 6B | |
|---|---|---|
| 打ち上げ日 | 2020年11月21日 | 2025年11月16日 |
| 運用状態 | 運用中 | 運用中 |
・Sentinel-1, 2, 3が2機の同一衛星(A-B、C-D)でコンステレーションを形成するのに対して、Sentinel-6は同時に運用されることはあるものの、基本的にリレー方式=BはAの後継機
・Sentinelシリーズの中で唯一の非太陽同期軌道(理由は後述)
観測目的
海面上昇の観測など、海面高度等のほぼリアルタイム測定データを提供します。本ミッションは1992年のTOPEX/Poseidon計画から始まり、その後Jason-1/2/3により継続されて、Sentinel-6に引き継がれました。ミッションの継続性を保つために、Sentinel-6シリーズは前身の衛星たちと同じく非太陽同期軌道で運用されています。
主な搭載機器
Poseidon-4
ESAが開発したKu/Cバンド対応のSAR高度計。海面高度(SSH)や有義波高(Hs)、風速などの高精度観測データを提供します。観測に使用する主な周波数はKuバンドであり、副次的なCバンド周波数は、電離層補正、降雨セル測定、地表面の粗さの推定に使用されます。
AMR-C
NASAが開発した高度マイクロ波放射計。主に、大気中の水蒸気量によるPoseidon-4のパルス遅延*1を補正するためのデータを提供します。
*1 高度計が発した電波パルスが、大気中(特に水蒸気)の影響を受けて進む速度が遅くなり、地表から戻ってくるまでの時間が実際より長くなってしまう現象
🄫ESA
まとめ
改めてSentinelシリーズを整理しましょう。
| Sentinel-1 | Sentinel-2 | Sentinel-3 | Sentinel-4 | Sentinel-5 | Sentinel-5P | Sentinel-6 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 初号機 | 2014/4/3 | 2015/6/23 | 2016/2/16 | 2025/7/1 | 2025/8/12 | 2017/10/13 | 2020/11/21 |
| 衛星 | SAR衛星 | 光学衛星 | マルチセンサ 環境観測衛星 |
大気観測衛星 | 大気観測衛星(センサ) | 大気観測衛星(センサ) | レーダー高度計衛星 |
| 運用 機関 |
ESA | ESA | ESA, EUMETSAT |
ESA, EUMETSAT |
ESA, EUMETSAT |
ESA | ESA, EUMETSAT, NASA, NOAA |
| 軌道 | 太陽同期軌道 | 太陽同期軌道 | 太陽同期軌道 | 静止軌道 | 太陽同期軌道 | 太陽同期軌道 | 非太陽同期軌道 |
| 主な 観測 対象 |
陸域全般 | 陸域全般 | 海面温度や 海色、 海面高度など |
微量ガス | 微量ガス、 エアロゾル |
微量ガス、 エアロゾル |
海面高度 |
| 主な 観測 機器 |
CバンドSAR | 高解像度マルチ スペクトル イメージャー |
SLSTR、 OLCI、 SRAL |
UVN イメージング 分光計 |
UVNS イメージング 分光計 |
TROPOMI | Poseidon-4、 AMR-C |
大きく括ると、以下の衛星同士には共通点があると考えられます。
☞Sentinel-1とSentinel-2
それぞれSAR衛星・光学衛星として、陸域および海洋のモニタリングを行い、観測データや画像を提供する。
☞Sentinel-3とSentinel-6
どちらも海洋における観測を行う。Sentinel-3が温度・色・高度など幅広く観測するミッションであるのに対し、Sentinel-6は海面高度に特化したデータを提供する。
☞Sentinel-4とSentinel-5 (5P)
大気の観測をミッションとし、Sentinel-4/5のどちらもセンサとして搭載されているのが特徴。Sentinel-4は静止軌道から、Sentinel-5は太陽同期軌道から、それぞれの軌道の特性を生かして互いのミッションを補完し合う。Sentinel-5P (Precursor)はその名の通りSentinel-5の前身として開発された衛星。
以上のように、本コラム第1、2回では、Sentinel各シリーズの特徴や共通点を見てきました。
次回は、次世代のSentinelシリーズについて探ります。
紹介した衛星のスペック詳細
参考文献
Sentinel-4
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Meteorological_missions/meteosat_third_generation/MTG-S1_and_Sentinel-4_launch_to_change_how_we_see_our_atmosphere
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Copernicus/Sentinel-4/A_breath_of_fresh_data_Sentinel-4_innovates_for_clean_air
https://www.airbus.com/sites/g/files/jlcbta136/files/2025-07/EN-Airbus-SpS-Press-Release-Sentinel-4-Launch-Success.docx.pdf
Sentinel-5
https://user.eumetsat.int/resources/user-guides/metop-sg-sentinel-5-uvns-l1b-data-guide
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Meteorological_missions/MetOp_Second_Generation/First_MetOp-SG_and_Sentinel-5_launched
https://esamultimedia.esa.int/docs/EarthObservation/SENTINEL-5_press_pack_250731.pdf
Sentinel-5P
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Copernicus/Sentinel-5P
https://sentiwiki.copernicus.eu/web/s5p-mission
https://dataspace.copernicus.eu/explore-data/data-collections/sentinel-data/sentinel-5p
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/Copernicus/Sentinel-5P/Introducing_Sentinel-5P
Sentinel-6
https://sentinels.copernicus.eu/missions/sentinel-6
https://sentinels.copernicus.eu/missions/sentinel-6/instrument-payload
https://science.nasa.gov/mission/sentinel-6b/about-sentinel-6b/





