Sentinelシリーズに迫る②~Sentinel-4, 5, 6について~

2026年05月25日

前回のコラムでは、Sentinelシリーズ全体の概要と、Sentinel-1, 2, 3について取り上げました。これらはすべて2機の同一衛星でコンステレーションを形成するミッションであるという共通点がある一方で、それぞれSAR衛星・光学衛星・マルチセンサ環境観測衛星であり、異なる役割を持っています。 今回はSentinelシリーズの後半にあたるSentinel-4, 5, 6の特徴をご紹介します。

▶Sentinel-4

基本情報

MTG-S1衛星に搭載されたセンサ
・運用機関はESAとEUMETSAT
・後継機が、2030年代に打ち上げ予定のMTG-S2衛星に搭載される予定

 
打ち上げ日 2025年7月1日
運用状態 運用中
※2026年5月現在

観測目的

静止軌道から欧州および北アフリカの一部を対象に、大気質を継続的に監視します。1時間ごとに大気中の微量ガスや汚染物質の濃度を測定し、ほぼリアルタイム(1時間以内)でデータ配信が可能です。極軌道上のSentinel-5のミッションを補完する役割を担い、大気汚染のモニタリングや予測、健康警報の発令などに活用されます。

センサ詳細

Sentinel-4 = UVN(紫外線・可視光・近赤外線)イメージング分光計。太陽光や、地表・大気からの反射光の中に残る微量ガスの痕跡 (footprint) を解析し、二酸化窒素、オゾン、二酸化硫黄、ホルムアルデヒドなどの量を推定します。

🄫ESA

▶Sentinel-5

基本情報

MetOp-SG-A衛星に搭載されるセンサ
・運用機関はESAとEUMETSAT
・Sentinel-5P(※後述)の後継機
・MetOp-SG-Aシリーズに継続搭載される予定であり、最低21年間のミッション期間が確保される

 
打ち上げ日 2025年8月12日
運用状態 運用中
※2026年5月現在

観測目的

全球を対象に、大気中の微量ガスやエアロゾルに関するデータを日次で収集します。太陽同期軌道からモニタリングを行い、静止軌道から観測するSentinel-4ミッションを補完する役割を担います。Sentinel-4と5、二種類の気象観測衛星を異なる軌道中に配置することで、気象予測や気候分析に向けたデータ提供の有効性を高める狙いです。大気汚染物質の濃度や気候変数、成層圏オゾンなど、大気組成に関するデータを提供します。

センサ詳細

Sentinel-5 = UVNS(紫外線・可視光・近赤外線・短波赤外線)イメージング分光計。前述のUVN分光計に加えて短波赤外線も測定できることで、観測対象が二酸化窒素・オゾン・二酸化硫黄・ホルムアルデヒドに加えて、メタン・一酸化炭素・二酸化炭素なども可能となった。

🄫ESA

◇Sentinel-5P

基本情報

・別名:Sentinel-5 Precursor
・1基で構成されたミッションで、大気観測用の受動型光学センサTROPOMIを搭載した衛星
・運用機関はESAであり、TROPOMIへの資金提供はESAとオランダが共同で行った
・2012年4月に運用が終了したENVISAT、その同時期に打ち上げられたAURA、および2020年代半ばに開始されるSentinel-4/5ミッションの間で生じた、全球大気データの空白を補うために計画された

 
打ち上げ日 2017年10月13日
運用状態 運用中
※2026年5月現在

観測目的

大気観測に特化した初のコペルニクス計画ミッション。二酸化窒素、オゾン、ホルムアルデヒド、二酸化硫黄、メタン、一酸化炭素、エアロゾルなど微量ガスの分布を把握し、得られたデータは大気質、オゾンおよび紫外線放射、ならびに気候の監視・予測に活用されます。

主な搭載機器

TROPOMI / TROPOspheric Monitoring Instrument (UVNSイメージング分光計)

観測対象(紫外–可視–近赤外–短波赤外(UV–VIS–NIR–SWIR))および基本的な観測機能はSentinel‑5 UVNS 分光計と同一。7.0km×3.5kmの高解像度を誇り、都市上空の大気汚染も観測可能です。TROPOMI による実運用実績を基に、本運用センサであるSentinel‑5 UVNSが開発されました。

🄫ESA

▶Sentinel-6

基本情報

・レーダー高度計衛星
・ESA、EUMETSAT、NASA、NOAAが実施する欧米共同のミッション
・各衛星の打ち上げ日および運用状態は以下の通り

 
  6 Michael Freilich(6A) 6B
打ち上げ日 2020年11月21日 2025年11月16日
運用状態 運用中 運用中

・Sentinel-1, 2, 3が2機の同一衛星(A-B、C-D)でコンステレーションを形成するのに対して、Sentinel-6は同時に運用されることはあるものの、基本的にリレー方式=BはAの後継機
・Sentinelシリーズの中で唯一の非太陽同期軌道(理由は後述)

観測目的

海面上昇の観測など、海面高度等のほぼリアルタイム測定データを提供します。本ミッションは1992年のTOPEX/Poseidon計画から始まり、その後Jason-1/2/3により継続されて、Sentinel-6に引き継がれました。ミッションの継続性を保つために、Sentinel-6シリーズは前身の衛星たちと同じく非太陽同期軌道で運用されています。

主な搭載機器

Poseidon-4

ESAが開発したKu/Cバンド対応のSAR高度計。海面高度(SSH)や有義波高(Hs)、風速などの高精度観測データを提供します。観測に使用する主な周波数はKuバンドであり、副次的なCバンド周波数は、電離層補正、降雨セル測定、地表面の粗さの推定に使用されます。

AMR-C

NASAが開発した高度マイクロ波放射計。主に、大気中の水蒸気量によるPoseidon-4のパルス遅延*1を補正するためのデータを提供します。

*1 高度計が発した電波パルスが、大気中(特に水蒸気)の影響を受けて進む速度が遅くなり、地表から戻ってくるまでの時間が実際より長くなってしまう現象

🄫ESA

まとめ

改めてSentinelシリーズを整理しましょう。

 
  Sentinel-1 Sentinel-2 Sentinel-3 Sentinel-4 Sentinel-5 Sentinel-5P Sentinel-6
初号機  2014/4/3 2015/6/23 2016/2/16 2025/7/1 2025/8/12 2017/10/13 2020/11/21
衛星  SAR衛星 光学衛星 マルチセンサ
環境観測衛星
大気観測衛星 大気観測衛星(センサ) 大気観測衛星(センサ) レーダー高度計衛星
運用
機関
 ESA ESA ESA,
EUMETSAT
ESA,
EUMETSAT
ESA,
EUMETSAT
ESA ESA,
EUMETSAT,
NASA,
NOAA
軌道 太陽同期軌道 太陽同期軌道 太陽同期軌道 静止軌道 太陽同期軌道 太陽同期軌道 非太陽同期軌道
主な
観測
対象
陸域全般 陸域全般 海面温度や
海色、
海面高度など 
微量ガス 微量ガス、
エアロゾル
微量ガス、
エアロゾル
海面高度
主な
観測
機器
CバンドSAR 高解像度マルチ
スペクトル
イメージャー
SLSTR、
OLCI、
SRAL
UVN
イメージング
分光計 
UVNS
イメージング
分光計
TROPOMI Poseidon-4、
AMR-C


大きく括ると、以下の衛星同士には共通点があると考えられます。

☞Sentinel-1とSentinel-2
それぞれSAR衛星・光学衛星として、陸域および海洋のモニタリングを行い、観測データや画像を提供する。

☞Sentinel-3とSentinel-6
どちらも海洋における観測を行う。Sentinel-3が温度・色・高度など幅広く観測するミッションであるのに対し、Sentinel-6は海面高度に特化したデータを提供する。

☞Sentinel-4とSentinel-5 (5P)
大気の観測をミッションとし、Sentinel-4/5のどちらもセンサとして搭載されているのが特徴。Sentinel-4は静止軌道から、Sentinel-5は太陽同期軌道から、それぞれの軌道の特性を生かして互いのミッションを補完し合う。Sentinel-5P (Precursor)はその名の通りSentinel-5の前身として開発された衛星。


以上のように、本コラム第1、2回では、Sentinel各シリーズの特徴や共通点を見てきました。
次回は、次世代のSentinelシリーズについて探ります。

紹介した衛星のスペック詳細

参考文献

関連リンク