鉄道や道路、堤防、水道、ガス、電気などの社会インフラは、長く、網目状に張り巡らされている、関連施設が点在しているなどの特徴があります。
これらは、日常点検や定期点検により維持管理されていますが、老朽化による耐力の低下や、大地震や地盤沈下・地すべりなどによる被害が懸念されています。
社会資本、個人の所有財産を守るため、社会インフラのライフサイクル全般に渡り、構造物、地盤・地質の状態を維持管理する体制の強化や効率化が、今求められています。
人工衛星の特徴である広範性、周期性を活かすことで、インフラネットワーク及びその周辺地盤を効率良く監視することができます。これにより、通常実施されている日常点検や定期点検を補うとともに、点検では発見できないリスクを発見することができるようになり、維持管理体制の強化や効率化に貢献することができます。

道路・鉄道

  • 広域に発生している地盤沈下と、それに伴い道路や鉄道に変位が生じている様子を可視化した例です。人工衛星に搭載された合成開口レーダ (SAR)で観測したデータを時系列差分干渉解析という技術で解析して得られました。

    この技術を用いると、道路・鉄道、関連施設といったインフラネットワーク及びその周辺地盤のいずれも一括して点検することができます。

    また、人が立ち入れない箇所、センサを設置できない箇所の計測や数十年間蓄積されている観測データを用いることができるため、過去に遡った分析も可能です。日常点検や定期点検で異常やリスクが発見された場合に、いつから異常が発生していたかを分析・把握することが可能です。

    地上で実施する測量やレーザー計測と比較するとやや精度は劣りますが、ミリメートル精度で変位計測が可能です。
    地盤変位発生状況のスクリーニングや、地上計測の補完技術として活用できます。
    RESTECでは、地表面変位計測サービスとして、本技術による計測結果をご提供しています。
  • 道路・鉄道

空港

  • 道路・鉄道といった社会インフラの事例で紹介した技術を、空港の監視に適用した例です。人が立ち入って測量することが制限される滑走路において変位の検出は非常に有効な手段となります。

    また、過去に撮影された航空写真や衛星写真と併せて可視化することで、地盤沈下が発生している領域が、埋立による空港拡張領域と一致していることがわかりました。

    上の画像は、SARで解析した結果を2004年以降に撮影された航空写真に重畳したものです。画像の左側のやや広い範囲に沈下が発生しています。
    さらに、岸壁や遠隔の海上構造物においても沈下が発生している様子も見てとれます。
    同じ解析結果を1970年代に撮影された航空写真と重畳した下の画像では、沈下個所がそれ以降の埋め立て・拡張個所と概ね一致してることが視覚化されています。
  • 空港
    背景写真は地理院タイル「簡易空中写真(2004年~)」(上)、 「国土画像情報(第一期:1974年~1978年撮影)」(下)を使用