RESTECはさまざまなネットワークや経験を活かして、農業分野における課題解決に役立つ情報や衛星を活用したサービスを使いやすい形でご提供します。 国内に限らず海外でも各国の宇宙機関、農業機関などとも密接に連携し、農業分野でのリモートセンシングの利用やスマート農業の促進に取り組んでいます。

衛星データとWebGISを利用した農地の現地確認効率化システム

株式会社ニュージャパンナレッジの提供する農地の現地確認効率化システムは、農業行政関係業務の中でも負担の大きい現地調査業務を効率化します。
このシステムは衛星データとWebGISを活用しており、衛星データ解析にはRESTECが開発したアルゴリズムが使われています。

農地の現地確認効率化システムとは

パソコンやタブレットで利用できるWebアプリケーションです。
用途に合わせて農地情報などの個別の設定が可能です。

管理ツールから、農地分類アルゴリズムを実行することで、調査が必要な圃場の衛星画像が色分け表示され、視覚的に判別が可能です。
これによって、事前に状況を把握することができます。
また、現地調査時にタブレットを利用すれば、紙の地図や印刷などが不要となり事前準備の負担が大幅に削減できます。

現地調査においては、GPSによって現在地を追尾しながら衛星データによる解析結果を表示することが可能です。
衛星解析結果と現地の状況を同時に確認しつつ、圃場の調査結果(項目・コメント・写真など)をその場で直接入力することができます。

  • 画面イメージ
  • 操作画面イメージ:農地検索
  • 操作画面イメージ:確認結果入力

様々な調査業務へ対応

このシステムは、農林水産省等が実施する交付金など、様々な制度で必要な現地調査業務の効率化に対応しています。
【調査業務例】
日本型直接支払制度:多面的機能支払交付金、中山間地域等直接支払交付金
経営所得安定対策:直接支払交付金、収入減少影響緩和交付金
農地パトロール(農業委員会):農地利用調査、利用意向調査
農地バンク(農地中間管理機構)

人工衛星を使った放牧牛の自動飼養システム

国内牛肉生産業は、消費量や枝肉卸売価格の上昇傾向の一方、飼養の穀物依存、消費者の赤身肉への志向の変化、SDGsの観点からのアニマルウェルフェア概念の拡大、といった課題を抱えています。また、小規模畜産家は減少しつつあり、経営の側面からICTの活用等による経営生産性の向上及び省力化の推進が求められています。

このような課題の解決策として「牛舎内での飼養」から「未利用地や耕作放棄地での飼養」へ転換し、放牧牛の飼養に衛星データを利用する実証が鹿児島大学と慶應義塾大学を中心に行われています。

地球観測 × 高精度測位 という2種の衛星データを牛の飼養システムに利用することで、省力化はもちろん、コストダウンや肉質・肉量の最適化を目指します。
 

特徴1:地球観測データを利用した放牧地モニタによる適切な放牧ローテーション

地球観測衛星データを用いて、牧草地の植生指数(NDVI)の時系列変化を検出します。
それにより、「牛が食べる草の量」と「放牧地の草の生育状況」を把握することができます。

この情報を活用すれば、広大な放牧地へ赴かなくても「放牧地を移す(ローテーションする)時期」および「牧草が回復して再放牧可能な時期」を推定することができます。

  • 衛星データから各牧草地の草丈等状態を推定
  • リモートでゲートを操作し、自動給餌機を介して状態の良い放牧地Bへ移動

特徴2:衛星による高精度測位での牛の行動・運動量把握と自動飼養

GPSや準天頂衛星を利用したマルチGNSS高精度測位を利用し、放牛の行動履歴データを取得・集積します。 これらデータは、行動・運動量の把握と飼料の要求頻度指標の開発に活用され、補助飼料の最適化算出とコスト管理につながります。

リモートセンシングによるキャベツの生育モニタリング実証

日本の農業の現場では、担い手の高齢化による労働力不足が課題の一つとなっています。 これを解決するため、ロボット・AI・IoT等の先端技術を活用し、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を実現する新たな「スマート農業」への取り組みが行われています。

RESTECは、農林水産省の「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(事業主体:農業・食品産業技術総合研究機構)において、岩手県が代表機関である「中山間地域の土地利用型野菜輪作体系における省力性・生産性向上に向けたスマート農業技術一貫体系の実証(課題番号:露B02)」へ参画し、衛星リモートセンシングを利用したキャベツの生育モニタリング実証を行いました。

この実証により、時期や品種を問わず、人工衛星の画像を基にキャベツの結球直径を推定できるモデルを試作しました。
このモデルでキャベツの収穫前に結球直径を推定することにより、収穫適期の推定や収穫計画(箱数など)の立案が可能となり、コスト削減や販売計画に貢献することが期待できます。
また、現場においても結球直径の分布を確認することができる簡易なWEB配信サービスを試作し、社会実装の可能性を示すことができました。

7月に岩手県八幡平市にある圃場で4回、8月に岩手県岩手町にある圃場で3回撮影実証を行い、衛星データと現地検証データから構築したモデルで、収穫2週間前までの相対的な結球直径を推定(使用した衛星はPlanetScope)

  • 図1.衛星画像による春キャベツ(岩手県八幡平市にある圃場)の推定モデル
  • 図2.冬キャベツ(岩手県岩手町にある圃場)の推定モデル

時期や品種を問わず、結球直径を推定

  • 図3.衛星画像による春キャベツ(岩手県八幡平市にある圃場)の結球直径推定図
  • 図4.衛星画像による冬キャベツ(岩手県岩手町にある圃場)の結球直径推定図

衛星データを活用した水稲作柄予測調査

農林水産省が全国各都道府県を対象に公表している水稲の作柄予測について、令和2年8月15日作柄概況より、衛星データを利用した新たな手法が導入されました。
従来の水稲調査では、草丈や茎数といった生育状況を実測で調査していましたが、アメダスのデータと人工衛星から取得したデータのみを利用した地域ごとの作柄を予想することが可能となりました。
このように、ICT技術等を活用した手法が、農業分野での合理化を可能にします。

RESTECでは平成29年度より農林水産省受託事業としてこの新たな手法の開発に取り組んでまいりました。今後もより効率的かつ精緻な水稲作柄予想手法の検討を行い、農林水産行政サービスへの貢献を目指します。

従来の生育状況実測調査の例

人工衛星データを活用した新たな手法による作柄予測イメージ図

  • アメダスデータに加えて、衛星データを利用することにより生育ステージの異なる地域の作柄を予測

超小型衛星を活用した水稲営農支援

超小型衛星PlanetScopeは、従来の衛星と比べて大幅に製造コストを抑えているにもかかわらず、ほぼ同等の性能(4バンド:青、緑、赤、近赤外;空間解像度3.7m)を持つだけでなく、百数十機の同時運用によって、ほぼ毎日の観測を実現しています。これにより、従来の衛星ではできなかった、高時間分解能、高空間分解能による衛星モニタリングシステムが構築できるようになりました。

超小型衛星群を用いた水稲営農支援システムとして機械学習(サポートベクターマシーン)を用いることにより、コシヒカリBLとみずほの輝きを対象として、7月中旬~下旬の穂肥診断における草丈・茎数・葉色(SPAD値)、9月上旬の収穫適期および収量・品質を、誤差数%から十数%の精度で予測することに成功しました。
このような取り組みがスマート農業の推進につながることと期待しています。

水稲の作付面積の推定

アジアの多くの国で食されている米。日本では灌漑設備が整った水田で生産されていますが、東南アジアの国々では雨水に頼った天水栽培も多く見られます。そのような場所では、その年の雨の降り方によって作付面積が大きく変わります。しかし、正確な作付面積の調査が難しいのが現状です。そこで、リモートセンシングの出番です。合成開口レーダ(SAR)は昼夜天候を問わず観測可能で、その観測データから水稲の作付地や面積を推定することができます。(図A-3)RESTECは、さらに収穫量の推測や、トウモロコシ・サトウキビなどの他の農作物への応用研究も進めています。

アジアの稲作の作況を判断する情報として公開する農業気象情報システム(JASMIN)の一例。
(B-1)上段では降水量・日射量・地表温度等を表示。下段は、それぞれの値が平年値と比べ高ければ赤、低ければ青で表示。(B-2)降水量の表示例。タイ北部で例年より降水量が多い地域があることが一目でわかります。