森林
日本の国土の3分の2は森林が占めています。その面積は2,500万ヘクタール(25万平方キロメートル)にも及びます。森林には私たちが安心して暮らしていくための様々な機能や役割があります。きれいな空気や水を作り出し、土砂崩れや鉄砲水といった災害を防止し、木材資源を供給し、時には憩いの場として人々に安らぎを与えてくれる貴重な自然環境です。
この森林を守り、その機能や役割を有効活用することは日本だけに限らず世界共通の課題です。特に近年では地球温暖化の対策として森林の働きが注目を集めています。
RESTECはこの課題解決に向けて、リモート・センシングに係る豊富な知見と、人工衛星に限らず航空機やドローンといった様々なプラットフォームを活用しながら、挑戦を続けています。
自治体の森林管理業務における衛星データ活用
衛星データの利活用は森林分野においても広がりを見せています。
森林簿の更新への衛星データ活用に取り組んだ自治体の例をご紹介します。
「森林簿」とは、自治体が民有林の状況(樹種、林齢、樹高、材積、所有者など)を小班(まとまり)ごとにまとめた帳簿です。森林法に基づく地域森林計画によって、都道府県ごとに整備・更新され、森林所有者や林業事業者への情報提供や伐採・造林といった森林施策に関する計画策定の基礎資料として利用されます。
この自治体では広大な森林を複数地域に分け、各地域を5年に1回の頻度で順番に航空写真を撮影し森林の状況を確認します。そして、それらの情報を基に森林簿を更新する作業が毎年行われています。
森林簿更新作業の課題
森林簿更新作業において、担当者は新旧の航空写真を目視で確認し、散発的に伐採等による林況の変化を探し出していました。このような手作業のため、次のような課題が挙げられます。
・目視確認による高い労務負担と作業効率の低下
・作業箇所の重複や取りこぼし発生などのリスク
・システム操作の習熟度による作業品質の不均一リスク
・以前の航空写真が5年前のため、森林の変化時点が確認できない管理上のリスク
衛星データを活用した作業概要とその改善効果
実証では、伐採等によって林況が変化した箇所を、SAR衛星の時系列解析によって抽出しました。これによって、従来担当者がGISソフトを用いて変化箇所を探していた手作業の一部を省略、効率化することできました。
これによって、次のような改善効果が期待されます。
・作業の効率化:変化箇所の機械的抽出により、網羅的で順序立てた確認作業が可能に
・取りこぼし防止:これまでの散発的な目視確認から、体系的な変化点抽出へ改善
・習熟度依存の軽減:高度なGISソフト操作時間の短縮により、新任者の負担を軽減
・変化の時点の確認:SAR衛星の時系列解析から林況が変化した時点を確認可能に
今後の展望
日本は、森林が国土の約3分の2を占める世界でもトップクラスの森林国です。その資源を適正に管理するためには、効率化が欠かせません。衛星データを活用したシステム構築にも、将来的な労働人口不足リスクへの対策のひとつとして期待が寄せられています。
また、自治体が、森づくりに関するビジョンや計画などを立てる中で重要になるのが、どのくらい森林が利用されているのか、という現状の把握です。しかし、5年に1回の撮影ではその間に起きた変化の情報を得ることができません。
衛星による定期的な観測データを用いることで、より精度の高い森林資源の把握につながることも期待されます。
森林資源量を捉える
人工衛星から地表を観測すると一度に広域な範囲(100㎞2以上)を捉えることができます。このため森林のように広い面積であっても、効率的に観測することが可能です。
RESTECでは、人工衛星が撮影した画像を活用して、森林の様子や資源量(材積量)を的確に捉える手法の確立に取り組んでいます。
観測用センサーの技術と性能の向上により、今では人工衛星が撮影した画像から1本1本の木の場所や種類を特定することができます(図1)。また複数の画像を組み合わせることで地面や木々の高さを推計することも可能です。木の先端と地面の高さの差分から木そのものの高さを推計し(図2) 、これと木々の分布状況から面積を特定することができれば、その範囲の森林の体積(資源量)を算出することも可能です。更には樹種の情報や道路の整備状況等を考慮してその資源の経済的な価値を評価する方法を研究しています。





