衛星データ利用ビジネス拡大の背景

2022年09月16日

ここ数年、衛星データを活用したビジネスは様々な分野で拡がっています。
利用拡大には様々な理由がありますが、データを提供する側の立場から4つのポイントで解説します。

衛星の小型化

  • まず1点目は衛星の小型化です。2000年頃は大型の衛星が主流で、例えば2006年に打ち上げられた日本の陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)は、衛星本体の大きさが4-5m、重さは4トンでした。「だいち」のような大型衛星は、通常複数のセンサを搭載し、1機の衛星で様々なデータを集めることが可能です。

    現在打ち上げられている多くの衛星は、2000年頃と比べだいぶ小型化しています。「だいち」とは目的や性能が違うので単純比較はできませんが、例えば米国Planet Labs社のDove衛星は、1.5リットルのペットボトルサイズで、重さは約5kgです。小型化することで、衛星1機あたりの製造コストも下がります。

大量打上げ

  • 衛星が小型化・軽量化すれば、1回のロケット打ち上げで複数の衛星を軌道投入することが可能になります。小型化は、衛星本体の製造コストだけでなく、打ち上げにかかるコストを下げ、製造から観測網構築までの時間を短縮する効果をもたらしました。

    再びPlanet Labs社の例を出すと、2017年にインドのロケットで100機近い衛星を一度に打ち上げました。1日にして、大規模なコンステレーション(衛星群)を構築することが可能になったのです。

高頻度観測

  • 現在の衛星リモートセンシングのトレンドは、小型衛星によるコンステレーション化です。例えば、1機の衛星では月に1-2回しか目的の場所を観測することができず、自然災害、農作物の生長、森林伐採など、重要なタイミングを逃す場合がありました。いかに優れたセンサを搭載していても、観測できなければ有用な情報を得られません。

    今は、1社が100機、200機の衛星コンステレーションを運用する時代で、この規模になれば、どのような場所でもほぼ毎日観測することができます。また、たとえ1機や2機の衛星が故障しても、残りの衛星で安定的に観測を継続することが可能です。データが安定的に供給されれば、そのデータを使ったサービスの継続も容易になります。

クラウド環境

  • コンステレーションによって衛星が取得するデータ量は飛躍的に増大しました。一方で、クラウドコンピューティング発達により、膨大な衛星データをクラウド上で検索・処理・解析できる環境が整いました。

    従来、ユーザーは1枚ずつ衛星データを検索し、数十分から数時間、場合によっては一晩かけてデータをダウンロードし、ローカルで処理・解析を行っていました。そのような方法は今でも行われており、数枚のデータを分析するには問題ありませんが、大量のデータを扱うには限界があります。

    現在は、大量のデータセットを格納し、クラウド上で衛星データの解析環境を提供する、例えばGoogle Earth Engineのようなサービスが始まっています。ユーザーがストレージや解析ソフトウェアを用意する必要が無くなり、初期投資のコストが劇的に下がりました。

    このような背景により、かつてないほどに多くの企業が衛星データビジネスに参入しているのです。