技術紹介 LバンドSAR画像をカラー化「擬似カラー化画像処理システム」

2022年07月27日

RESTECの保有する特許「擬似カラー化画像処理システム」についてご紹介します。
これは、一般的に判読が難しいといわれる合成開口レーダ(SAR)のモノクロ画像をカラー化することで視認性を高める技術です。

合成開口レーダ(SAR)とは

現在地球観測衛星に搭載される主なセンサとして、光学センサとSARセンサの2種類があります。 

光学センサは光学画像は可視光など太陽光の反射量を画像化したもので、いわゆるデジカメのようなものです。人の目と同じような画像となるため、何が写っているのか直感的にわかりやすいものとなっています。
一方SARセンサは、センサからマイクロ波を地球へ向かって発射し、対象物から反射し戻ってくる強度を画像化します。得られるのはモノクロ画像で、判読には知識や経験が必要です。

SARセンサには光学センサと異なる大きな特徴が2点あります。
一つは、光源に頼らないため夜間の観測が可能なこと、もう一つは雲の影響が少ないため、天候に左右されずに観測できることです。
そのため、夜間や悪天候下での災害観測や、一定期間の変化をとらえるための定点観測などにとても有効なセンサです。

SARセンサには波長の短いものからX-band、C-band、L-bandなどの種類があり、「ふよう(J-ERS1)」に始まった日本のSAR衛星はL-bandが多く採用されています。
波長が長いL-bandはマイクロ波が木々の葉や枝の影響を受けにくく、X-bandやC-bandと比べて地表面の状態がわかりやすいという特徴があります。

SAR画像について

  • 図1の画像は、西日本豪雨で浸水した岡山県倉敷市真備町付近のSAR画像です。

    SAR画像はセンサから放射されたマイクロ波の反射の強弱を白と黒の濃淡で表現しますが、反射の度合いは、対象物の種類や表面の状態(凸凹など)で異なります。
    一般的には、表面が滑らかな時は鏡面反射が多くなり、画像は暗くなります。逆に表面が荒い場合は後方散乱が多くなり、画像は明るくなります。

    この画像でも右側や下部に暗く映っている箇所が確認できますが、このままでは水域、裸地や植生などの直感的な判読が困難です。 
  • 図1 岡山県倉敷市 / だいち2号(ALOS-2) L-bandSAR画像 PALSAR
    図1 岡山県倉敷市 / だいち2号(ALOS-2)

カラー化でSAR画像を身近に

  • SAR画像の判読の難しさを解消するために、RESTECは2013年に陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)搭載L-bandSAR画像のカラー化技術を開発し、特許(6366935号)を取得しました。
    このカラー化技術は、対象となるSAR画像1枚のみで実現でき、かつ、処理によって解像度が劣化しないことが最大の特徴です。

    図2の画像は、図1と同じ画像をカラー化技術により光学画像の色合いに近づけたものです。
    緑地は緑に、水面は青黒く、地面は茶色で表現することで、地表面の状態がわかりやすくなりました。

    この技術は、現在様々な分野で活用されています。
    例えば、防災・減災分野では被害状況把握や雲がある光学画像の補間技術、また、メディア向け画像として。さらに、土木・建築分野では現地確認手段の一つや画像アーカイブスとしての利用です。
  • 図2 岡山県倉敷市 / だいち2号(ALOS-2)/ 図1をカラー化 L-bandSAR画像 PALSAR
    図2 岡山県倉敷市 / だいち2号(ALOS-2)/ 図1をカラー化

RESTECは、リモートセンシング技術の研究開発とへ取り組み、社会実装を促進します。