静岡県 熱海市伊豆山地区 大雨による地面の状態変化を示した衛星画像(COSMO-SkyMed)の公開について

2021年07月13日
インフォメーション

この度の静岡県 熱海市伊豆山地区で発生した土砂災害においてお亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、未だ行方の分からない方の一刻もはやい救出をお祈りいたします。また、被災された皆様ならびに、そのご家族の皆様に対し心よりお見舞い申し上げます。

リモート・センシング技術センター(RESTEC)は、令和3年(2021年)7月1日からの大雨による熱海市伊豆山地区の地面の状態変化を示した衛星画像を公開しました。画像は、イタリア宇宙庁(ASI)が運用する合成開口レーダ(SAR)※1を搭載した人工衛星、COSMO-SkyMed※2により撮影された画像及びその解析結果です。

  • 白地図
  • 光学映像(Sentinel-2画像)+白地図
  • 災害前(2021年6月17日)のSAR画像
  • 災害後(2021年7月3日)のSAR画像
この地図は、国土地理院ウェブサイトの令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報の「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図(7月6日第3報公開)」を利用しています。また、鉄道線は「国土数値情報 鉄道データ」、道路情報はOpenStreetMapを利用しています。右上図ではSentinel-2画像(©Copernicus Sentinel data 2021)を背景図として利用しています。下図ではCOSMO-SkyMedデータ(COSMO-SkyMed Product/COSMO Second Generation Product - 🄫ASI 2021 processed under license from ASI - Agenzia Spaziale Italiana. All rights reserved. Distributed by e-GEOS. Analyzed by RESTEC)を利用しています。

比較① 災害前及び災害前後における散乱強度(画像の濃淡)の違いに着目

図1は、いずれも災害前の2021年4月14日と2021年6月17日のSAR画像を合成して作成した画像※3です。また、図2は、災害前の2021年4月14日と災害後の2021年7月3日のSAR画像を合成して作成した画像※3です。図中の赤色又はシアン色で浮かびあがっている箇所は、2つの撮影日間に生じた地面の状態変化を示します。図中の水色ポリゴンは、国土地理院が公開した逢初川の集水域を示します。

図1(災害前)では、今回の土石流の崩壊源とされる盛土地の西側に変化が見られます。この変化は図2(災害前後)でも確認ができ、災害前に生じた変化であることがわかります。
一方、図2(災害前後)では今回の土石流が発生した谷筋に沿って赤色とシアン色の変化が筋状に見えています。この変化箇所は、図3で示す国土地理院提供の崩壊地等分布図と良く一致しています。このことから、SAR画像で土石流の流下箇所が明瞭に検出されたことがわかります。

  • 図1:災害前のSAR画像の合成
  • 図2:災害前後のSAR画像の合成
  • 図3 国土地理院公開「梅雨前線に伴う大雨による崩壊地等分布図(第3報)」
この地図は、国土地理院ウェブサイトの令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報の「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図(7月6日第3報公開)」を利用しています。また、鉄道線は「国土数値情報 鉄道データ」、道路情報はOpenStreetMapを利用しています。解析画像は、COSMO-SkyMedデータ(COSMO-SkyMed Product/COSMO Second Generation Product - 🄫ASI 2021 processed under license from ASI - Agenzia Spaziale Italiana. All rights reserved. Distributed by e-GEOS. Analyzed by RESTEC)を利用しています。

比較② 災害前及び災害前後における散乱強度(画像の濃淡)と電波の揃い具合の違いに着目

図4,5ともに、災害前及び災害前後の観測日の組み合わせは比較①と同じですが、本図では、電波の揃い具合の違い(「コヒーレンス」と言う)を考慮して地面の状態変化を可視化しました。
この方法による可視化画像をMTC画像※4と言います。

図中で赤色や緑色は変化が大きい箇所、黄色は緩やかな変化(一般に植生部分)の箇所、青色は変化がない箇所を示します。前出の比較①の結果と同様に、今回の土石流の崩壊源とされる盛土地の西側に災害前に生じた変化が見られます。
また、図5(災害前後)で今回の土石流が発生した谷筋に沿って赤色と緑色の変化が筋状に見えており、土石流が流下した様子が明瞭にわかります。さらに、図5(災害前後)では住宅地内にも赤色と緑色の変化が山側から海側に向かって帯状に見えており、同じ場所を図4(災害前)と比較すると明らかな変化であることがわかります。この帯状の範囲は、図3で示した国土地理院提供の崩壊地等分布図と良く一致しており、土石流により被害を受けた住宅地の範囲を示していることがわかります。

  • 図4:災害前のMTC画像
  • 図5:災害前後のMTC画像
この地図は、国土地理院ウェブサイトの令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報の「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図(7月6日第3報公開)」を利用しています。また、鉄道線は「国土数値情報 鉄道データ」、道路情報はOpenStreetMapを利用しています。解析画像は、COSMO-SkyMedデータ(COSMO-SkyMed Product/COSMO Second Generation Product - 🄫ASI 2021 processed under license from ASI - Agenzia Spaziale Italiana. All rights reserved. Distributed by e-GEOS. Analyzed by RESTEC)を利用しています。

画像解析による変化箇所の抽出

比較①及び②の画像で見られた変化を、画像解析により可視化しました。図6は災害前の2021年4月14日と災害後の2021年7月3日のSAR画像を比演算処理※5した結果です。

この処理により、土石流が流下した範囲が浮かび上がりました。図7では国土地理院提供の崩壊地等分布図(黄色破線)を重ねていますが、比演算によって浮かび上がった範囲が崩壊地等分布図(黄色破線)と良く一致していることがわかります。

図8は災害前の2021年4月14日と2021年6月17日、災害前の2021年4月14日と災害後の2021年7月3日、災害前の2021年6月17日と災害後の2021年7月3日のそれぞれで電波の揃い具合の違いを解析※6し、その結果を合成した図です。この処理により、地面の状態が大きく変化した箇所が赤色で帯状に浮かび上がりました。この赤色の帯状の範囲は、図9で示した崩壊地等分布図(黄色破線)と良く一致しており、土石流により被害を受けた住宅地の範囲を示しています。また、その範囲は東海道新幹線の線路まで達しています。

これらの図により、SAR画像を利用して土石流の崩壊源から末端部までを検出できました。

  • 図6:SAR強度画像の比演算結果
  • 図7:図6へ崩壊等分布図を重畳
  • 図8:3時期の電波の揃い具合の違いを合成した結果
  • 図9:図7へ崩壊等分布図を重畳
この地図は、国土地理院ウェブサイトの令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報の「崩壊地等分布図及び土砂堆積範囲図(7月6日第3報公開)」を利用しています。また、鉄道線は「国土数値情報 鉄道データ」、道路情報はOpenStreetMapを利用しています。解析画像は、COSMO-SkyMedデータ(COSMO-SkyMed Product/COSMO Second Generation Product - 🄫ASI 2021 processed under license from ASI - Agenzia Spaziale Italiana. All rights reserved. Distributed by e-GEOS. Analyzed by RESTEC)を利用しています。

用語の解説

(※1)合成開口レーダ(SAR)
 合成開口レーダ(SAR)は映像レーダの一種で、衛星等に搭載されたアンテナから電波(マイクロ波)を対象物に向けて照射し、対象物で後方散乱(反射)した電波を再びアンテナで受信する観測センサです。受信した後方散乱波の強度を可視化することで画像が表示でき、一般に白黒の濃淡画像になります。後方散乱が強い箇所ほど白色に近く、後方散乱が弱い箇所ほど黒色に近くなります。
 日本語では「合成開口レーダ」ですが、英語では「Synthetic Aperture Radar」で、その頭文字をとってSAR(サー)と略して呼ばれます。
 人工衛星に搭載されるSARセンサではXバンド、Cバンド、Lバンド帯の周波数が一般的に利用されており、1つの衛星に何れか1つの周波数のSARセンサが搭載されます。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用中のだいち2号(ALOS-2)では、LバンドのSARセンサが搭載されています。なお、今回利用したCOSMO-SkyMedはXバンドのSARセンサを搭載しています。

(※2)COSMO-SkyMed
 COSMO-SkyMedはイタリア宇宙庁(ASI)が運用中のSAR衛星で、4機体制のコンステレーション衛星です。2007年に1機目の衛星が打ち上げられ、2010年に4機体制になりました。なお、現在も4機体制で運用されており、1機で16日に1回、4機では4日に1回の観測が可能です。4機は同一軌道上にあるため、号機が異なっても同一観測条件であれば差分解析が容易で、干渉解析による地殻・地盤変動計測も可能で、高頻度のモニタリングに適した衛星です。2019年には後継機(継続機)であるCOSMO-SkyMed Second Generation(CSG)が打ち上げられ、2021年にはその2号機目も打ち上げ予定です。CSGはCOSMO-SkyMedと同一軌道であり、同一の観測モードも有しているため、事実上、COSMO-SkyMedのコンステレーション体制を強化・増強した(する)ことになり、より高頻度な観測を実現可能です。
なお、通常観測モードであるStripmap HIMAGEモードの分解能は3mです。より高解像度の観測モード(Spotlightモード)も有しています。
 COSMO-SkyMedに関する情報は、RESTECのウェブサイトからもご覧いただけます。
衛星情報データベース(衛星総覧):https://www.restec.or.jp/satellite/index.html
衛星画像製品・COSMO-SkyMed:https://www.restec.or.jp/solution/product/cosmo-skymed.html

(※3)SAR画像を合成して作成した画像
 異なる2つの観測日に撮像されたSAR画像を色の三原色(赤(R)、緑(G)、青(B))に割り当て、合成画像を作成することで変化箇所を簡単に可視化できます。観測日①と観測日②のSAR画像がある場合、観測日①を赤色、観測日②を緑色と青色としてRGB合成します。これにより、観測日①と観測日②の後方散乱の差異が赤色やシアン色で浮かび上がります。なお、変化がない場合は元の白黒濃淡色になります。災害前後のSAR画像を利用した場合は、赤色やシアン色で浮かび上がった箇所に被害箇所が含まれる場合があります。

(※4)MTC画像
 SARデータには後方散乱の強さを表す「強度情報(振幅情報とも言う)」と、衛星から地上間を電波が往復してアンテナで受信した時点での電波1波長内での位置を表す「位相情報」が含まれています。MTC画像は強度情報と位相情報を利用した可視化方法で、※3と同様に異なる2つの観測日に取得されたデータを利用します。
 また、色の三原色を利用して可視化します。観測日①と観測日②のSAR画像がある場合、観測日①の強度情報(強度画像)を赤色、観測日②の強度情報(強度画像)を緑色、そして、観測日①と観測日②との位相の違い(電波の揃い具合の違い)を青色としてRGB合成します。変化として浮かび上がる色は、赤色、緑色、黄色、青色の4色です。赤色や緑色は強度の変化を示し、地面の状態が大きく変化したことを意味します。一方で、青色は観測日①と観測日②の強度も位相も変化がないことを示し、地面の状態に変化がないことを意味します。黄色は中間の変化を示し、風の影響を受ける植生や煙突などの安定しない対象物で良く見られます。
 なお、MTCはMulti Temporal Coherence mappingの頭文字をとった略語です。ここで、Coherence(コヒーレンス)は相関を意味しますが、SARの分野では位相の違い(電波の揃い具合の違い)をコヒーレンスと呼びます。

(※5)比演算
 画像①と画像②がある場合、その変化量を比率で表現する際に利用されます。単純に画像①と画像②の割り算をする方法や、画像①と画像②の差を正規化する方法があります。

(※6)電波の揃い具合の違いを解析
 MTC画像(※5)で解説した通り、観測日①と観測日②との位相の違い(電波の揃い具合の違い)を解析する方法です。SARデータのうち、複素数の実部と虚部で記録されたデータを利用します。観測日①と観測日②の複素相関を計算することで、電波の揃い具合を評価できます。この解析をコヒーレンス解析と呼び、解析結果は0から1の実数値になります。地面に変化が生じた場合は0に近い値になり、地面に変化がない場合は1に近い値になります。地面の変化に非常に感度が高く、後方散乱強度による変化(濃淡の変化)では捉えられない微小な変化を捉えることができます。

出典等

国土地理院ウェブサイト「令和3年(2021年)7月1日からの大雨に関する情報」:https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html
Sentinel-2の画像入手(sentinelhub EO Browser):https://www.sentinel-hub.com/explore/eobrowser/
OpenStreetMapの入手(BBBike.org):https://extract.bbbike.org/

その他

本プレスリリースの画像を掲載する場合は、クレジットを掲載頂くようお願い申し上げます。
例)「提供:一般財団法人リモート・センシング技術センター」、「リモート・センシング技術センター」、「©RESTEC」

本件に関するお問い合わせ

総務部広報課 植平
TEL:03-6435-6722
E-mail:uehira@restec.or.jp