北海道胆振東部地震による地面の変化を示した衛星画像の公開について

2018年09月19日
インフォメーション

この度の平成30年北海道胆振東部地震により、被災された皆様ならびに、そのご家族の皆様に対し心よりお見舞い申し上げます。

リモート・センシング技術センター(RESTEC)は、平成30年9月6日に発生した北海道胆振東部地震による地面の変化を示した衛星画像を公開しました。画像は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた人工衛星、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」により撮影された画像を用いた解析結果です。

【北海道厚真町周辺の平成30年8月23日から平成30年9月6日の間の地面の変化を表した画像】

画像① 衛星と地面との距離変化(差分干渉解析) 
画像② レーダー反射強度の変化(強度画像解析)

画像①、画像②は土砂崩落が多く発生した北海道厚真町周辺の変化画像です。
画像①は衛星と地面との距離変化(地面の沈下や隆起、移動)を示した図で、地震による地殻変動や気象ノイズなどの影響を取り除き※1、局所的な変動のみを抽出しました。河川沿いの平坦な土地に局所的な変動が見られており、液状化や地すべり等により発生した変動である可能性があります。ただし、この図では土砂崩落箇所が集中した山地は砂嵐のようにみえており、土砂崩落箇所を確認できません。これは、土砂崩落で災害前後の地面の状態が大きく変化して干渉性が低下したためと考えられます。

画像②は、画像①と同一範囲の地震前後のレーダー反射強度の変化を可視化した画像です。画像①では確認できなかった土砂崩落箇所を色の変化(赤は崩落箇所、青は崩落した土砂の堆積箇所)でみることができ、厚真町の山地で土砂崩落が多く発生したことがわかります。ただし、この図ではレーダーの反射強度の変化のみに注目しているため、画像①でみられた液状化や地すべり等によると思われる地面の沈下や隆起、移動は確認できません。
だいち2号の観測データを用いて、衛星と地面との距離変化の解析(差分干渉解析)とレーダー反射強度の変化解析(強度画像解析)とを併用することで、液状化や地すべりによると思われる地面の沈下や隆起、移動と、土砂崩落と堆積箇所を総合的に情報抽出することができました。

※1 地震による変動や気象ノイズなどの影響の除去について
画像③-1は、通常の差分干渉解析手法で解析した北海道胆振地方周辺の平成30年8月23日から平成30年9月6日までの地面の変動です。この図では、厚真町周辺の広範囲に北海道胆振東部地震による地殻変動を示す色変化やそれと似た気象ノイズによる色変化がみられ、その中に局所的な変動が隠れて見えにくくなっています。そこでRESTECでは、地殻変動や気象ノイズによる長周期の色変化を取り除く処理を施し、局所的な変動のみを抽出する手法を適用し、画像③-2の局所変動図を作成しました。

※2 画像①の解釈について
画像④は画像③-2から清田区を抽出した画像で、図中に見られる衛星と地面との距離変化箇所が地盤工学会による清田区の現地調査結果の液状化被害発生箇所とほぼ一致していることが確認できました。画像①の解釈はこの事実に基づくものですが、現地確認されたものではないことにご留意ください。

【差分干渉解析とは】
だいち2号などのレーダー衛星に搭載されている合成開口レーダーにより、同じ場所を、同じ観測条件で観測した2枚以上の画像データから衛星と地面との距離変化を解析する技術です。
今回の解析では、北海道胆振地方周辺の同じ場所を、同じ観測条件で、平成30年8月23日と平成30年9月6日に観測して得られた画像データを用いています。


参考:平成30年北海道胆振東部地震による地盤災害緊急報告会(地盤工学会)

今後もRESTECは、本手法を用いた解析処理をホームページへ公開していきます。