RESTECの現在と今後の展望 -RESTEC Forum2022

2022年11月24日


RESTECフォーラム2022 ~ リモートセンシングの新たな潮流 ~
講演:経営企画部長 山本 彩

リモートセンシングの新たな潮流

  • 昨年度のこのフォーラムでは「Remote sensing Transformation」と題しまして、チャンピオンデータによるデモンストレーションの時代からデータの高頻度化高精度化時代へ向けたアプローチについてご報告したと記憶しております。
    今年度は実際に高頻度化・高精度化してきている新しい衛星データや、またその提供の新しいあり方も含めまして「リモートセンシングの新たな潮流」と題し、現在の事業や今後に向けた取り組みをご紹介していきたいと考えております。

RESTECの取り組む事業について

RESTECが現在取り組んでいる事業を五つほど簡単にご説明し、最後に新たな取り組みについても少し述べたいと思います。

まず一つ目は、マルチソースデータと技術による社会課題への解決と題した事業になります。RESTECは創立以来、様々な衛星データの提供事業を行っております。現在RESTECで取り扱いのある衛星データの国籍や種類に関しては、国内随一の多様さではないかと自負しております。近年、新しい衛星だけではなく提供の形態も変わってきている中、皆様の必要とする、課題を解決するに足る衛星データを迅速にお届けすべく新しいパートナーも増やしており、本日最後の講演でもそのあたりをお聞きいただけるかと思います。課題解決に対するマルチなデータによるアプローチについても引き続き注目していただければと思います。

二つ目です。こちらも創立以来行っている開発、運用、校正検証、解析、研究、普及促進といったJAXAさんの地球観測事業に関する様々な業務支援です。一例としていくつかご紹介するとインスタの画像の作成といったようなフランクな業務から熱帯雨林のモニタリング、また、リアルタイムに近い全世界での雨のモニタリングのような様々な業務まで、衛星データの利用に取り組んでおります。

  • そして三つ目となる研修活動に関しましても、創成期より実施しております。昨今新型コロナが国内外で影響を及ぼしてはございますが、RESTECではこの機をチャンスと捉え、オンラインを活用した研修の拡大充実にも積極的に取り組んでおります。
    研修活動開始以来2022年3月末までの延べ研修受講者は、89の国と地域より8,391名という非常に多くの方に受講いただきました。この数年ではオンラインでの受講者も増え続けております。
    また、従来は特別なソフトウェアもしくは大量のデータを保存するようなハードディスクなどがないと解析ができなかった環境から、今ではWebブラウザさえあればソフトもデータも手元になくても解析ができる環境に変わっています。RESTECはwebブラウザ上で解析ができるVEGAと呼ばれているソフトを開発し、無償提供するなど技術の普及にも取り組んでおります。
  • 研修実績

VEGA(Visualizing Earth tool by Google Earth Engine Apps)について


それから四つ目です。今の技術の話にも少し関わりますがクラウド上のプラットフォームを用いたサービス提供に向けた技術開発や実証事業にも取り組んでおります。その一例として、Tellusに実装するアプリケーションやツールの開発実証事業にも参画しております。今年度は複数の衛星による海洋情報の合成ツールと、SAR衛星による海上風の風速算出ツールの開発の提案を採択していただきました。こういった多様なデータの統合解析をクラウド上で行い、お客様の手元に届けるような仕組みについても積極的に取り組んでいるところでございます。 最後に、社会へのリモートセンシング技術の実装の推進に関しましても引き続き取り組んでおります。様々なパートナーの皆様と、多様な分野において実証事業を行っている中で、今年の例の一つといたしましては経産省さんの宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業として、高分解能の光学衛星画像とAIを用いて固定資産税の算出のための移動調査を効率化する実証にも取り組みはじめました。家屋の滅失・新築の調査において、人手を介すことなく、衛星データからAIを使って判読することで行政の業務の効率化に取り組むといったような流れでございます。

新しい取り組み

このような事業を行っている中での新しい取り組みとして、現状の流れを二つほどご紹介いたします。

一つはパートナーのさらなる拡大でございます。
災害・社会インフラ・地理空間情報・農林水産・環境など様々な分野におきまして、まだまだ我々の知らない課題やニーズがたくさんあると考えております。このため、これまで衛星データを全く扱ったことがないもしくは衛星データのことをそもそも知らない業界や組織の皆様にも積極的に声をかけ続け、衛星データ利用をさらに進めていきたいと考えております。
本日もいくつかのパートナー企業様と一緒にご講演させていただきますので、その一端をご覧いただければと思っております。

それから、先ほど理事長の池田からも報告ありましたが、今年から新たに研究助成の取り組みをはじめました。
こちらの研究助成はリモートセンシング技術のさらなる普及を目指して実施しております。今年7月に募集を行ったところ21件の応募をいただき、その中から審査を経て8件を採択いたしました。それらの情報は全てホームページに公開しております。次年度も引き続き公募を行う予定でございますので、ご興味のある方はぜひご覧になっていただければと思います。

RESTECの今後

そして最後になりますが、RESTECは、これまで国の内外を問わず行ってきた研修事業や技術の普及促進のための活動など、一般財団法人として実施してきた公益目的の事業に引き続き着実に取り組んでまいりたいと思っております。またその一方で、様々なニーズを踏まえた技術の社会実装の推進に向けて、マルチソースによるデータ提供や、実証事業に取り組むことで、リモートセンシング技術を通じた豊かな社会の形成をこれからも目指していきたいと考えております。

引き続き皆様のご指導ご鞭撻をどうぞよろしくお願いいたします。

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