RESTECの現在と今後の展望

2021年11月25日


RESTECフォーラム2021 ~ Remote Sensing Transformation~
講演:経営企画部長 坂田 英一

Remotesensing Transformation(RX)について

 Remotesensing Transformation(RX)は、Digital Transformation(DX)になぞらえて、昨今のリモートセンシングの状況を表現するためにRESTECが作った造語です。我々が40年以上にわたって、関わってきたリモートセンシングに関して、データの取得手段や解析手段が進化し、提供するソリューションも、より現実的なものになってきました。

 この状況に伴い、ビジネスの場としての認識も上がり、新しい企業の参入も増えてきました。
 かなり昔の事ですが、まだLANDSATデータが有料であった頃、リモートセンシングは、数少ない人工衛星で撮影されたデータを用いた利用のデモンストレーションが中心でした。それから年月が経ち、センサの多様化が進み、画像以外の情報も得ることができるようになり、現在は小型衛星をはじめ多くの衛星が打ち上げられることで大量のデータを頻繁に得ることができるようになりました。また価格も下がり、無償で使えるデータも増えました。
 こうした状況の変化に伴い、従来では難しかった高頻度観測や多様な波長帯による観測データを用いたソリューションサービスが実現可能になってきています。また、クラウド等巨大なITプラットフォームの出現により、データ管理・分析といった面での手軽さやスケーラビリティも向上してきています。さらには、ドローンによる空中撮影等が手軽に行えるようになり、より詳細な情報を得ることもできるようになりました。

 今後のリモートセンシングは、衛星データの高精度化・高頻度化がさらに進み、衛星以外の多様な観測手法も含めて、データ量が爆発的に増加するものと予想しています。一方でDX(Digital Transformation)が進み、多様なデジタルデータが入手できるようになると、衛星データもその一部としてシームレスになり、さらに現実的なソリューションが出てくるのではないかとも予想しています。

 さらに物理予測モデルやAIによる予測と組み合わせることで、リモートセンシングを用いた予測をする。これがリモートセンシングの未来ではないか、と考えています。

RESTECの現在

 次にRESTECの現在の状況についてご紹介します。

 RESTECは多様なソリューションに対応できるよう、衛星の大小、JAXAや民間、国内外などを問わず様々な衛星により得られたデータを提供しており、種類を随時増やしてきております。
 また、国内のDIASやTellusといった地球観測系のプラットフォームに参画しつつ、海外のAmazonやGoogleといった気軽に使えるプラットフォームも活用してソリューションを提供しています。他にも、衛星画像データの分析で培った技術を応用したドローンや防犯カメラ等の画像・映像処理サービスも行っています。

 一方でRESTECには創業時から続く受託事業として、地球観測衛星のミッション運用があります。その中でも校正検証と呼ばれる作業は、データの正確性・高精度化を保証し利用を促進ためにも、特にニーズが高まってきています。
 同じく創業時から続く研修事業においては、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行拡大に対応し、従来の対面方式から、e-Learningやリモート会議形式など、オンライン化を進めました。これにより、国内外問わず遠方からでも研修に参加することが可能となり、従来に比べてエリアを限定せず、リモートセンシングの普及に役立っています。

こうした事業の進化と共に、現在は衛星データを主体とした実証事業等を通じて、ユーザーの皆様と一緒に技術レベルやサービスの質の向上に努めています。

衛星データを主体としたソリューション提供

 RESTECのソリューション提供例をご紹介します。

 まずは「地表面変位計測サービス(RISE: RESTEC Interferometry Service)」です。RISEは人工衛星搭載の合成開口レーダで取得した複数時期のデータを比較して、地表面の変位をミリメートルオーダーで計測することができるサービスです。インフラ関連や建設関係のユーザーに、工事の施工における異常検知やその影響などの調査に用いられています。

 次に「AW3D(全世界デジタル3D地図)」についてです。AW3Dには、精度が5mのものから50cmの高精細な地図までいくつかのプロダクトがあります。。例えば、ビルの形もわかる立体地図を利用したテレコム3Dでは、携帯電話の電波の影になる部分等をコンサルティングすることができます。これは現在、日本全国から全世界まで整備を進めており、ユーザーの方々には大変ご好評いただいています。

 また「沿岸海洋情報提供」として、衛星データを用いた深浅測量「SDB(Satellite Derived Bathymetry)」についてご紹介します。通常、沿岸30mくらいの深さを測ることは大変なのですが、RESTECは衛星データから水深情報を推測する技術を保有しています。この技術を活用し、沿岸の情報をユーザーの方々に提供しています。

  •  地方公共団体への衛星データ利用の取組も行っています。例えば洪水の被害が起こった際に、衛星画像を用いてその時の洪水の深度を測る「推定浸水深」です。令和元年(2019年)の台風で、埼玉県の一部が大きな洪水被害を受けた際の浸水深度を測った画像をご紹介します。

     そして「人材養成に向けた取組」として、研修のオンライン化に続いて、国際展開も進めています。昨今、海外への展開が難しい中ではありますが、ベトナムへの人工衛星の輸出に関する研修、JJ-FASTと呼ばれる森林の保護に関するJICAの研修、東南アジアでの農業統計のためのデータ取得、インドネシアにおける漁業監視やコンゴ民主共和国国家リモートセンシングセンターのサポートなど、研修を通じて国際的な協力関係の構築を進めています。
  • 推定浸水深マップ例:令和元年東日本台風(2019年10月12日)埼玉県荒川水系付近の画像 翌13日観測のSPOT-7号の画像に、推定した浸水深を重畳したもの

RESTECの今後の展望 ~実証から実用へ~

 RESTECは現在、多くのユーザーの皆様と共に様々な実証事業を行っております。これらを本当の実用に繋げるためには、3つの要素の達成が重要と考えています。

 1つ目は「仕様と保証」です。
行政などの業務マニュアルに組み込み、実用いただけるように働きかけをする。そのためにはサービスの仕様づくりとその成果の保証を行う事が重要です。
 2つ目は「使いやすさ」です。
実際の操作が複雑では実利用に繋がりません。製品・アプリの使いやすさを追求することが重要です。
 3つ目は「時間・空間を意識しない展開」です。
データ利用に際し、先にも述べたプラットフォームを活用することで、利用するための時間や国の距離などの空間を意識しない展開を行うことが重要です。

 RESTECは、もっと多くの方の業務で実用的に利用できる製品・サービスを提供することを目指していきたいと思います。

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