DXによる社会の変化と新たなビジネスチャンス

2021年11月17日


RESTECフォーラム2021 ~ Remote Sensing Transformation~ 基調講演
講演:株式会社ブロードバンドタワー 代表取締役会長兼社長CEO 藤原 洋 氏

ポストコロナ社会とは?

 まず、ポストコロナ社会についてお話しします。今まではコロナが始まる前のことをビフォーコロナ、その後のことをウィズコロナ・アフターコロナと言われていました。現在では、コロナ禍でパンデミックが起こった後のことを総称してポストコロナ社会と呼ぶことが通例のようなので、ポストコロナ社会と呼ばせていただきます。

 ポストコロナ社会には、8つの特徴があると考えています。
 1つ目は、誰にもCOVID-19への感染リスクがあるということ。2つ目は、行動原理が「三密回避」になっていること。3つ目は、ワークスタイルの基本がテレワークへと変化していること。4つ目は、ライフスタイルの基本もホームワークへと変化していること。5つ目は、首都圏一極集中から地域分散へと変化していること。これは昨年の夏から東京都の人口が減少し始めていることからわかります。6つ目は、SDGsがコロナ禍でまさに浸透しているということ。7つ目は、「健康」と「経済」の両立が一つの価値観としてできたということ。8つ目は 、「健康」とは「人間」だけでなく「自然環境」についても言われるようになっているということ。例えばカーボンニュートラル/フリー/ネガティブの考えが非常に重要な現実問題になってきています。

 このようなポストコロナ社会に起こる産業構造の大きな変化、これこそがDX(Digital Transformation)、デジタル変革であると思われます。

ポストコロナ社会に加速するデジタル文明

 次に、ポストコロナ社会に加速するデジタル文明について、グローバルなデータをご紹介します。
昨年、「インターネット」の利用人口は世界人口の過半数を超えて、59%と急増しました。世界の人口増加率よりもインターネット人口の増加率の方が高くなっています。また、「モバイル」の利用者も2/3を超えて、その大半がインターネット利用になっています。そして、ソーシャルメディアの利用者も半分に迫るという状況になってきています。
こういったことから、自動車や家電などこれまでの様々なテクノロジーの中でも、国連のSDGsのコンセプトにある「誰ひとり取り残さない」100%普及に向かっているのは、このデジタルテクノロジーであると言えるでしょう。

 世界のインターネット社会化を統計から紹介します。世界の人口増加は約1%/年と言われていますが、「2020年のDX(デジタルトランスフォーメーション)ヘッドライン」によると、世界のインターネットの利用者数は2019年から7%増加しています。「DIGITAL AROUND THE WORLD IN 2020」からは、世界のソーシャルメディア利用者数は2019年から9%、モバイル機器の利用者数は2019年から2.4%増加したことがわかります。
 それから、我々がどのくらいDXに関わりオンラインで過ごしているか(潜在的DXニクスと私は呼んでいますが)についてご紹介します。平均的なインターネットユーザーは1日約6時間43分をオンラインで過ごしています。この数字は、1日 8時間睡眠だとすると、目覚めている時間の4割をインターネット上で過ごしていることになります。また、2020年の世界中のインターネットユーザーは、累計で12憶2500年をオンラインで過ごし、1日の1/3以上の時間はソーシャルメディアを利用しています。国別でも差はあり、一番長いフィリピンで1日あたり約9時間45分、日本は比較的少なく、4時間22分とのことです。
 GlobalWebIndexによると、全インターネット利用時間の半分以上をモバイルが占めています。世界のインターネットユーザーの92%はモバイルデバイス経由ですが、16-64歳のインターネットユーザーの3/4はPCも併用しています。webページリクエストの約53%がモバイル、44%がコンピュータ機器ということがMOBILE’S SHARE OF TOTAL ONTERNET TIMEからわかります。

 また、国や地域におけるインターネットアクセスレベルを決定づけるには年齢が大きな役割を果たしています。例えば、インターネットがあまりつながっていないアフリカでは総人口の半分以上が20歳未満であり、南アジア全体では13歳未満の人口は4億6000万人を超えています。
性別面では、南アジアに住む女性は男性に比べてソーシャルメディアを利用する可能性が3倍以上低いことが分かっています。また、インドに住む女性の半分以上は、モバイルインターネットの存在にすら気づいていません。インドはIT先進国ですが、IT格差も激しい国ということです。そういった意味で、世界のインターネット利用のジェンダー問題も今後の課題です。

ポストコロナ社会のデジタルイノベーション=DX

 続きまして、ポストコロナ社会のデジタルイノベーションがDXであるというお話です。ポストコロナ社会に起こる産業構造の8つの大きな変化がDXであるとお話をしました。
 では、DXとは何か。これは2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面で、より良い方向に変化させること」とした学術的な提言でした。その後一挙にビジネス界に広がったのが、2010年です。
スイス・ローザンヌにある、国際競争力の国別比較で有名なビジネススクールIMDのマイケル・ウェイド教授らによって「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」と定義し、DXは実はデジタルビジネストランスフォーメーションであると提言されました。

 そして決定的だったのは、2018年に日本の経済産業省が世界で初めてDX政策を国策として打ち出したことです。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業績そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義し、今日のDXのブームに火をつけたわけです。

 ここで、デジタル化とDXの相違についてお話ししておきたいと思います。当初デジタル化とは、アナログ信号をデジタル信号に変換することでした。例えば紙の資料をデータにする、人の手作業をRPA(Robotic Process Automation)で自動化するといったものです。すなわち、情報をデジタル化し、再現可能とすることです。対してDXとは、デジタル化だけではなく、データを使った企業あるいは組織の変革そのものを指します。多角的な観点から既存の仕組みを変革する必要があり、現場レベルの課題解決、デジタル変革、すなわち変革に軸足を置いているのがDXです。
つまり、デジタル化は企業・行政にとってDXの必要条件ではあるが十分条件ではありません。デジタル化によって実現した情報の再現性を使ってコンピュータに情報の意味を理解させ、自動的な処理を、組織の変革にまで高度化する必要があります。コンピュータが理解するということは人工知能に関係してくるということです。

 経済産業省のDX政策はこのように言っているわけですが、2020年に、企業あるいは行政の基幹システムのうち2割が21年以上経過していることが分かりました。2025年には、人材不足は約43万人に拡大し、基幹システムはさらに老朽化が進み、放っておくと21年以上経過したシステムが6割になってしまいます。最近、古い金融機関等で様々なトラブルが起こっていますが、これは基幹システムの老朽化が原因と考えられます。このままいくと、2030年には年間最大12兆円の損失が起こってしまうといわれています。経済産業省が警告するように、我々企業・行政の仕組みもDXを推進していかないと遅れが出てしまう、「2025年DXの崖」と言われています。

 経済産業省の「DXを推進するためのガイドライン」は非常に良くできています。産業においてデジタル技術を駆使した革新的なビジネスモデルを展開すると、新規参入者が続々と出現します。Eコマースが典型例ですが、コロナ禍で既存の企業は実店舗販売だけでは大きな打撃を受けます。劇的な環境変化に取り残されずに競争力を維持するには、各企業が積極的に DX を推進する必要があるということです。ところが、大胆な変革に踏み出せていないという現状もあります。DX実現の課題・対応策のためにDXレポートが出ています。皆様も推進ガイドラインを読んでいただければと思います。

 DXが必要な理由は3つあります。
 1つ目は「ビジネスの多様化」です。今までとは違う新規参入の企業が続々と出てきている状況です。2つ目が「既存ITシステムの老朽化」です。多くの組織で既存システムは限界を迎えており、2020年で21%、2025年には大半の企業のシステムが20年以上を経過し老朽化を迎えることになってしまいます。行政の縦割りはだめだ、横串だといわれていますが、企業も部門間で個別であり、連携をするためにも既存のシステムを変える必要があるということです。3つ目は「消費者マインドの変化」ということです。製品を購入して所有するという、いわゆるモノ消費からコト消費へと消費者マインドが変化したことが非常に大きいというわけです。

DX推進基盤となるテクノロジートレンド

 続きまして、DX推進基盤となるテクノロジートレンドについてお話しします。
1つ目に次世代情報通信基盤が必要ということです。情報通信基盤は今5G/Beyond5Gへと進化をしています。2つ目にAI(人工知能)/ML(機械学習)技術があらゆる分野へ浸透していること。3つ目にサイバーセキュリティ危機が増大していること。4つ目はデータ技術が進化していること。5つ目がハイブリットクラウド&エッジコンピューティングといった世界が進んでいること。例えば、皆さんもいろんなクラウドをご利用かと思います。Amazon Web Servicesがトップシェアですが、実はほかのクラウドのシェアも伸びています。また、単独のクラウドを使うだけではなく、複数のクラウドの特徴を組み合わせたハイブリットクラウドと、身近なところでエッジコンピューティングといった流れが出てきています。

 1つ目の5G/Beyond5Gへの進化についてお話しします。5Gの経済効果は徐々にきており、大容量化・高速化、そしてIoTの世界が進んできています。イノベーションの方向性は30年で1万倍という風にデータの容量が増えてきています。通信だけではなくコンピュータ業界もみていきます。例えばDell Technologies社では5Gは仮想化されたオープンアーキテクチャーで、中身を作っているのはコンピュータ産業です。日本では楽天、アメリカではDISH社といった会社の例では、仮想化されたコンピュータシステムが基地局の運用にまで入ってきています。これが仮想化という技術です。それから5GのオープンRAN(Radio Access Network)システムへも入ってきています。新興キャリアのDISH社は、従来の無線通信事業者とは違ったアプローチをしています。

 2つ目のAI/ML技術が全テクノロジー分野へ浸透しているという話です。皆さんがよく使われている、教師なしでも学習させるディープラーニング(深層学習)は包含関係でいうと、AIの一部がMLであり、MLのそのまた一部にディープラーニングが入っています。ユーザー企業において、AI利用が促進しています。イノベーションの方向性でいうと、アルゴリズム実装が領域特化別に進んでいて、それぞれの業界に適したアルゴリズムが深堀されています。現状は最適化AI基盤の提供、AI化された製品、強化されたサービスが加速していて、AIは既に市場でも製品でもなく、浸透するテクノロジーとなっています。
 AI化は5年ほど前から加速していますが、全領域にAIが浸透しているのは主に3パターンです。1つは「AI-in」と呼ばれる製品に埋め込まれたAIのパターン。例えば、バッテリー寿命が延びるようなAIを組み込まれているというようなことです。次いでは「AI-on」と呼ばれるパターンで、今後4年以内にデータセンター、クラウドの過半数はAI処理のために利用されます。そういった意味で、最近GPUサーバーなどが増えています。20年前に始めた我々のデータセンターでは、当初はラック当たりの電源消費量が大体2kVAくらいでしたが、今は12kVAというのもざらにあります。これの中身はAIです。最後は「AI-for」と言われる、ビジネスプロセスのインテリジェンスです。AIを例えば工場の推論やサプライチェーンの安定化に使うという、AIを外に使うパターンです。
 このようにin/on/forというような浸透が進んでいます。

 3つ目のサイバーセキュリティ危機と対応についてです。サイバーセキュリティ分野の方はご存知かと思いますが、ここで重要な概念は「ゼロトラストネットワーク」というものです。リモートワークにも関係してきますが、従来は社内ネットワークをファイヤーウォールで守り、外からの侵入を防ぐということでした。現在は家やリモートオフィス、新幹線に新設されるオフィスコーナーなど様々な場所で仕事をするようになります。また、クラウドコンピューティング時代のコンピューターリソースは社内ではなく社外にあり、特定領域を完全に防御するというエリア別のセキュリティ対策では不十分になります。
 米サイバーセキュリティ企業 バロアルトネットワークス社のCTOジョン・キンタ—バーグ氏が提唱したクラウド時代の新セキュリティモデルであるゼロトラストネットワークは、性悪説を基本としています。社内は安全という前提は崩れ、性悪説のアプローチが絶対に必要であるという、ゼロトラストネットワークが提案された背景には、2010年前後に多発した深刻なセキュリティ侵害や情報漏洩が原因にあります。次世代のネットワークセキュリティの概念は、このゼロトラストネットワークで世界が動いています。

 4つ目のDXを支える技術基盤の変化は、データ技術の進化です。従来の情報処理で重要なのは、DB(データベース)でしたが、昨今ではDM(データマネジメント)です。データガバナンス・データシェアリング・データクオリティ・ビジネスインテリジェンス等が言われているわけです。言うなれば、DMとはアーキテクチャ・ガバナンス・トランスフォーメーション・ウェアハウス・インテグレーションデフィニッション・クオリティコントロール・マスターデータをどうするか、どうやって管理するか。DBシステムとはそのほんの一部ということです。

 5つ目の技術基盤が、ハイブリットクラウド&エッジコンピューティングです。まずモバイル通信からみたエッジコンピューティングについてお話します。それ自身は5Gでクローズアップされたわけですが今はモバイルではなく「MEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)」に進化しています。ゲームや映像配信、VR(ヴァーチャル・リアリティ/仮想現実)、AR(オーグメンテッド・リアリティ/拡張現実)などコンテンツ系の進化が大きいわけです。クラウドまで持っていっては間に合いません。同様に、工場の制御もクラウドではできません。やはり工場内でのエッジが必要となります。
 オートメーションではなくデータ処理に基づくオートメーション、この変化を支えるのがMECです。モバイルも工場もこういったことから従来とは違ってきます。例えば移動通信事業でいうとモバイル網の基地局のそばにサーバー群を置くことが重要になってきます。MECというのは、モバイル視点から見たエッジコンピューティング技術で、端末に近いところにサーバーを分散設置することでリアルタイム性向上、ネットワーク負荷軽減、セキュリティ強化、負荷分散や処理遅延の短縮を見込んでいます。分野としては画像分析や位置情報、IoTやVR,AR、自動運転などが今後のMECの活躍の場になってきます。
 移動通信事業者NTTドコモのモバイル網におけるサーバー設置の検討例として、伝送網と基地局の間に、ドコモオープンイノベーションクラウドが交換機と伝送網の間、ゲートウェイの間に設置される展開が進んでいます。

分野におけるDXの具体化と市場規模

 最後に各分野におけるDXの具体化と市場規模についてお話しします。まず、社会全体のDXの全体像についてです。セキュリティと第三者のシステム監査が重要です。国家情報通信基盤DXを今後進める必要があり、デジタル庁は5年以内に進めるとしています。データ流通・利活用、クラウドデータ連携基盤および基本アーキテクチャーを作ること、マイナンバーカードの普及、通信インフラ・電力(カーボンニュートラル)も考慮する情報基盤にするというものです。このデジタル庁が先導する国家情報通信基盤DXのインフラに対して、自治体のDX、インフラDX、教育DX、農業DX、医療DX、金融DXこれらがこの国家情報通信基盤DXとAPI(Application Programming Interface)とで統一化されたAPIで相互接続されるというのが今後の国家の社会のDXの全体像です。

 総務省が中心となっている自治体DXについてお話しすると、「誰ひとり取り残さない、人にやさしいデジタル化」に向けてデジタル活用支援が進められています。国直轄の補助事業としては、マイナポータルやe-TAX、オンライン診療予約などがあります。地方財政の措置を活用したものはNPOや地域おこし協力隊の支援などがあります。例として広島県の自治体DXを紹介すると、まず方針として「仕事・くらし」「地域社会」「行政」をデジタル化させて、人材育成・集積、官民データ連携をDX推進の基盤とするとしています。

 次に、国土交通省系のインフラDXでは、様々なことが言われています。まずは社会資本や公共サービスの変革、業務そのものや組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革していくことです。そのために国民・業界・職員へ向けて公共事業への理解の浸透、災害による被害軽減等の実感を。業界へは安全で快適な労働環境の実現、建設業の誇りと魅力の向上を。職員へは在宅勤務などの働き方の実現、省内の所掌横断的な対応の実現を。これらをDXとしています。

 また文科省が担当する教育DXの中心になるのが、GIGAスクール構想です。まず、一人一台端末の環境を整備します。そして遠隔オンライン教育を推進し、学習用のデジタル教科書やCBT(コンピューターベーステスト)を行う。学校も先生も一体化して、一人一台端末を進めていきます。また、大学ではデジタル技術を活用した高等教育ということで、データサイエンス学科を増やしていくこととしています。また、大学だけではなく、生涯学習へも大きな投資をしていく。教育データの利活用も今後進めていくとされています。こうして、教育DXに関しては、今まで「国立情報学研究所(NII)」が中心になっていた大学間ネットワークや国立研究所の相互接続ネットワーク(SINET)に小中高のインフラまで加えていくとされています。

 それから農林水産省が担当する農業DXの概要についてお話しします。このDX構想は農業・食関連のデジタル変革で、高齢化・労働力不足に対してデジタル技術を活用して対応するとしています。そして消費者ニーズを起点としながらデジタル技術で農業の価値を上げていくとしています。時間軸では、2030年に大きな成果を得るというものです。生産現場、農村、地域について様々なことが計画されています。作るだけではなく流通・消費についてもデジタル技術を生かすということで、第一次産業の流通・消費、食品製造業、外食・中食、行政手続きなどを電子化していくことも含まれています。
 コロナ禍で明らかになった農業・食関連分野における課題は、デジタル化の遅れです。これは農業だけに限りません。経済におけるつながりの分断、社会の不確実性への脆弱性、行政の運営における非効率性、デジタル時代の社会インフラの確保といった課題が明らかになっています。
 そして基本的な方向は6つ定められています。1つ目が政府方針に基づく農業DXの推進、2つ目がデジタル技術の活用を前提とした発想、3つ目が新たなつながりの形成によるイノベーションの促進、4つ目が消費者・利用者目線の徹底、5つ目がコロナ禍による社会の変容への対応、6つ目が持続可能な農業の実現によるSDGsの達成への貢献となっています。デジタル3原則(デジタルファースト/ワンスオンリー/コネクテッドワンストップ)とデジタル庁設立の精神でもあるデジタル社会を形成するための10の基本原則の2つを守り、農業DXを推進するとしています。

 次に医療DXは厚生労働省・経済産業省・総務省の3省が3つのガイドラインを作成して推進されています。例えば医療情報のクラウド化について、総務省ではクラウドサービス事業者向け安全管理のガイドライン、厚生労働省では病院・薬局等の医療機関等のガイドライン、経済産業省では情報処理事業者向けのガイドラインとなっています。この3つのガイドラインは2020年からは2つに統合されました。
 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を活用して医療情報を管理するポイントは3つあります。1つ目が情報の安全管理として、組織的/物理的/技術的/人的安全対策が言われています。2つ目が電子的な医療情報を扱う上での管理者責任です。データは非常に重要ですので、情報漏洩や誤用がないように、通常時の責任とトラブル時・事後の対策の責任が記述されています。3つ目が電子保存における注意点です。真正性の確保、見読性の確保、保存性の確保という3つがデータ管理において重要です。医療DXではこのような点が行政の方針となっています。

 金融DXについて、金融機関はトラブルあるいは不正利用が起きたりして、持続可能性の強化が言われています。行政・金融機関・対顧客・対社会において、守りだけではなく成長も重要という観点から、金融の育成強化、DX戦略の推進による顧客体験(ユーザーエクスペリエンス)の高度化、銀行業務を効率化させる、地方経済の再生と産業成長の支援をするというのが金融の役割とされています。

 皆さんもDXを進められていると思いますが、ビジョンの共有、大切なこととして経営トップのコミットメント、マインドセット、KPIとロードマップの構築、推進とサポート、人材育成が導入手順として必要です。
 こうしてDXを具体化するメリットとして、第一に業務の生産性が向上します。第二に消費行動の変化に対応したビジネスができるようになります。売れる商品開発にはDXが効果的です。第三はBCP(事業継続計画)です。コロナ時代でも事業がストップせず前へ進めることができます。
 デメリットは多少あります。1つ目はすぐに効果が出ないことです。諦めずに進めることが大切です。2つ目は多額のコストが発生することです。これはやむを得ません。3つ目は既存システムからの移行が困難であるという点です。既存システムにはどこかで見切りをつけて、継続性と転換というタイミングをご検討いただければと思います。
 タクシー配車アプリのUberは、DXの事例です。日本では未だ認可されていませんが、タクシーの常識を変えました。他にも民泊の相互利用のairbnbやCtoCフリーマーケットアプリのメルカリ、顧客対応サービスを均一化するためのRPA(ロボティックプロセスオートメーション)、それからストリーミング配信のNetfrixも、利用者が多くなってきています。

 国内のDX 市場規模は2030年までに3.8倍に急速に拡大するといわれています。経済産業省の旗振りで2018年に始まったとされるDXは、2019年の市場規模が8000億円弱でしたが、2030年には3兆425億円になるといわれています。特に成長する分野として、製造業のスマートファクトリーやサービス化が4.6倍、営業マーケティングは2.6倍、カスタマーサービスは2.1倍になると言われています。
 交通・運輸の分野では、例えば自動車のCASEなら、コネクテッドあるいはオートノマス、シェアード、EVやエレクトリックのような変革に遅れないようにすることが重要です。金融はデジタル審査・予測などがますます重要です。また、銀行法改正への対応もあります。製造業はスマートファクトリー、サービス化への投資が中心となります。例えばラズベリーパイベースのIoTシステムも一気に進むだろうということです。流通はデジタルオペレーションへの投資が中心になるだろうとされています。医療介護については、データ活用へのニーズが高いということで医療ビッグデータ分析への支援が大きくなってくるといわれています。不動産も大きな市場で、コロナで大きく動いています。賃貸や業務管理のICT化が遅れているといわれています。俗人的で効率が悪く、DXやスマートロックなどの利用も含めて一気に進むだろうといわれています。
 分野別では営業マーケティングのCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)、カスタマーサービスなどが見込まれています。SFAとCRMで顧客を管理してお客を増やしていく重要なところです。また、MA(Marketing Automation)はセールスとマーケティングの相互関連性を意味づけるということであります。

 以上、簡単ですが「DXによる社会の変化と新たなビジネスチャンス」についてご紹介しました。

関連リンク