リモートセンシング技術による、持続可能な開発目標=SDGs(Sustainable Development Goals:SDGs)への貢献

JICA課題別研修「JJ-FASTと衛星技術を活用した熱帯林管理」

JJ-FASTとは

  • 国際協力機構(JICA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、開発途上国の森林資源の保全及び気候変動対策や生物多様性保全への貢献のため、森林破壊を衛星で監視するシステム「JICA-JAXA熱帯林早期監視システム(JJ-FAST)」を2016年に共同で立ち上げました。熱帯林の伐採検出のために、JAXAの衛星「だいち2号(ALOS-2)」を用いて中南米、東南アジア、アフリカの熱帯林78か国の森林変化を衛星データから自動抽出し公開するシステムです。各国の森林官は、システム(ウェブサイト)へスマートフォンやPCでアクセスすることで、伐採地の形状などの詳細な情報をいつでも確認することができます。

    開発途上国における広大な森林のモニタリングは、はインフラの未整備、治安もしくは人員や予算の不足など様々な課題を抱えています。現地へ赴かなくても宇宙から森林の情報を得ることができるJJ-FASTは、これらの課題を解決するための有効な手段となり得ます。
  • JJ-FAST画面イメージ

JICA課題別研修

  • 日本が有する知識や経験を通じて各国が抱える課題解決に資するために、途上国へ企画提案し実施するのがJICA課題別研修です。その分野は自治や農業、科学など多岐にわたり、リモートセンシングに関する課題別研修も行われています。

    RESTECは、2017年よりリモートセンシング技術の習得、JJ-FASTを活用した熱帯林保全等能力の向上のための課題別研修を担当しています。
    これは、違法伐採による森林減少を抑制するための施策である「JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)」ウェブサイトの構築・運用などに関する人材育成を目的としたものです。

    この課題別研修を通じて、開発途上国における森林ガバナンスの向上や森林保護の取り組みへ貢献します。
  • 研修の様子
  • 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

リモートセンシング技術を活用した市民参加型バイオマス調査

2020年12月10日、宮崎県綾町とイオン環境財団のご協力を得て「綾町イオンの森」においてリモートセンシング技術を活用した市民参加型のバイオマス調査を実施しました。
綾町では、イオン環境財団が2013年~2019年に町有林伐採跡地で植樹を行っており、今回実施したバイオマス調査により、植樹林のCO2吸収量を推定し植樹後の気候変動緩和への貢献度合いを客観的に把握することができます。

リモートセンシング技術を活用したバイオマス量算出には、人工衛星やドローンから取得される情報と、現地調査の情報を用います。

当日の現地調査については、植樹に携わってきた綾町より綾中学校1年生(64名)をはじめ、綾ユネスコエコパークセンター、イオン環境財団及び RESTECが参加しました。参加者は12班に分かれてイオンの森へ入り、タブレットでドローンの観測画像を確認しながらおよそ60本の調査対象の樹木を探し、樹種、樹高、幹の周囲長をメジャーなどで測定してタブレットに入力しました。

後日、この現地調査結果とドローン観測画像から取得した情報を用いてRESTECが森全体のバイオマス量を算定し、気候変動緩和への貢献度合いを評価しますが、ドローンから取得した情報だけでなく現地調査データを得ることでバイオマス量算出の精度が向上します。

また、ICTを利用した環境保全活動に中学生が参加することで、環境問題や科学技術への関心が高まることが期待されます。

  • 標識番号配置図とタブレットの情報から調査対象の樹木を探し出す
  • 調査対象樹木の樹種や樹高などを調査・測定してタブレットへ記録
  • 綾町イオンの森
  • 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する。

島しょ国における気候変動適応策の取組み

  • 衛星を使うことで、広範な地域でも制約なく沿岸地形情報(陸側と海底)を整備・提供できます。

    気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、高潮、沿岸域の氾濫及び海面水位上昇による、沿岸の低地並びに小島嶼開発途上国及びその他の小島嶼における死亡、負傷、健康障害、生計崩壊のリスクが指摘されています。
    これらリスクへの対応には沿岸地形情報の整備が欠かせません。
    海面上昇に加えサイクロンの通過ルートとして甚大な被害が発生しやすい南太平洋島しょ国において、衛星を利用した沿岸地形情報を整備し、さらに、気候変動対応予測を加味した、サイクロン由来高波・高潮ハザードマップの整備実証が行われています。(フィジー、サモア等)
    この取り組みにより、島しょ国の重要インフラにおける気候変動適応関連事業等への貢献が期待されます。
  • 気候変動適応策の取組み
    浸水ハザードマップ フィジー国首都地域(スバ)ワーストケース(RCP 8.5 / 200年確率)
  • 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる