空間IDを活用した防災情報の三次元管理   人工衛星とSNS情報から推定した浸水域の公開

2023年06月08日
インフォメーション

一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)と、株式会社Spectee(スペクティ)は、デジタル庁「デジタルツイン構築に関する調査研究」事業※1として行った、衛星データ※2とSNSから得られる災害時の浸水情報を空間IDで管理し三次元表示するシステムの実証結果を公開します。

昨今、各地で気象災害が甚大化している中、河川氾濫などの被害が繰り返し起こっており、各自治体、行政側の対策として、より高度な情報管理と過去情報を用いた備えが重要視されています。
そこで衛星データやSNSから得られた浸水情報を、地形や建物と組み合わせて3D化するシステムを開発し、被災時の街の浸水状況の再現を試みました。
浸水情報は空間ID単位で管理・ベクトルタイル化しており、Plateau※3の建物情報と組み合わせて3D表示することで、どの建物が何㎝程度、浸水しているのかを把握することができます。
また、可視化プラットフォームにはCesium※4とPhotorealistic3D※5タイルを組み合わせて使用し、高精細で快適な表示環境を提供しています。
実証にあたり、佐賀県庁のご協力のもと、六角川流域市町を対象地域としました。図1は、2019年8月豪雨に伴う、衛星データとSNS情報を重畳したシステム画面を示しています。同豪雨の際国土交通省が公開した有明海沿岸道路の武雄北方インターチェンジの浸水被害の写真(図2)と比較すると、被害状況の高い再現性※6、視認性が確認できます。

  • 図1:三次元で示した武雄北方インターチェンジ付近画像
  • 図2:発災時の武雄北方インターチェンジ付近画像※7

広範囲の浸水情報を撮影できる衛星データの広域網羅性とSNS情報の即時性を掛け合わせることで、高精度な浸水情報を迅速に生成することができます。その浸水情報に空間IDを活用し、3次元に可視化し提供することで、被災状況の把握や振り返り情報としてのより効果的な利用が可能となります。例えば、被災者に自治体が発行する罹災証明発行までの時間短縮等、自治体業務の効率化による市民サービスの向上に繋がる可能性があります。将来的には、より高度なデジタルツイン技術を取り入れていくことで、リアルタイム性の高い避難誘導、救命活動の支援などへの利用にも期待されます。
RESTECとスペクティは、今回の実証実験で得られた知見と技術を基に、ステークホルダーと協力しながら利用拡大を進めていきます。

■RESTEC:空間IDを活用した防災ユースケースの開発及び衛星データの解析を担当。
■スペクティ:SNSデータの解析及び空間IDへの対応を担当。

※1:デジタル庁「デジタルツイン構築に関する調査研究」事業
ダイナミックマッププラットフォーム株式会社がデジタル庁より受託し行った事業。RESTECはダイナミックマッププラットフォーム株式会社からユースケース実証企業として採択された。
※2:宇宙航空研究開発機構(JAXA)が保有する陸域観測技術衛星2号(ALOS-2)/Lバンド合成開口レーダを搭載。
※3:Plateauは、国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの設備・オープンデータ。
※4:Cesiumは、オープンソースとして提供される3D地理空間可視化プラットフォーム。
※5:Photorealistic3Dは、3D表示ソフト。
※6:再現された浸水状況は図2と同時刻の結果を表したものではありません。
※7:出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/rokkaku_project/r0108_gouu.html