灌漑農業と水資源 サスティナブルな農業を目指して

2022年03月14日

アメリカは「世界の食料庫」と呼ばれる世界有数の農業大国です。
2019年の総務省のデータによると、その農用地は約1億6千万ha(世界第2位)と日本の約36倍もの面積を有し、地域の気候や土壌など自然条件に合わせた農業がおこなわれています。
主要な農業地帯のひとつに、コロラド州とネブラスカ州、テキサス州にかけて広がるハイプレーンズと呼ばれる地域があります。降水量が少なく乾燥しているこの地域では、人工的な方法で水を耕地に供給し作物を育てる灌漑農業が普及しています。

Sentinel-2の2021年夏のデータを用いて、ハイプレーンズに広がる農場をVEGAで可視化しました。

大小さまざまな円は「センターピボット方式」と呼ばれる灌漑農業の農場です。地下水などを汲み上げ、円の中央部を軸に灌漑用のスプリンクラーが回転し作物に水を与えるため、画像で見られるような円形の農場が形成されます。
この方式は、河川や降水の少ない地域でも低コストで効率的に灌漑できることから、1950年代~2000年代始めにかけて、アメリカや中東諸国、オーストラリアなどの乾燥した地域で普及し、大規模農業の発展に貢献してきました。

しかし、近年は灌漑による地下水位低下などの問題により、センターピボット方式を廃止する動きが各国で出ています。
例えば、ハイプレーンズの灌漑農業で使用する水源の90%以上が、オガララ帯水層と呼ばれる地下水で賄われています。降水などで涵養される水量の約3倍もの地下水を灌漑農業に使用し、地域によっては年間で1.5mも水位が低下したと言われています。このような地下水の減少が、同地域における農業の持続可能性に大きな影響を与えることが危惧されています。

そう遠くない未来、この地上のサークルを目にすることもなくなるかもしれません。

地名(国名)ハイプレーンズ(アメリカ合衆国)
画像製品Sentinel-2