線状降水帯 気象とリモートセンシング

2022年06月06日

異常気象と災害

近年、世界中で異常気象とそれを原因とする災害が相次いでいます。
ここ日本も例外ではなく、夏の酷暑化やそれに伴う農作物への影響、さらには集中豪雨の増加による洪水や土砂災害が後を絶ちません。たとえば、2021年夏に発生した静岡県熱海市における集中豪雨では、大規模な土石流により多くの被害をもたらしたことは皆さん記憶に新しいでしょう。

集中豪雨の要因 線状降水帯とは

この集中豪雨には「線状降水帯」が大きく関与していると言われています。 線状降水帯とは、線状に列をなし連続的に発生した積乱雲が、ほぼ同じ場所で長時間にわたり雨を降らす降水システムで、2014年ごろから使われるようになった言葉です。特に西日本で発生が多く、近年多発する豪雨災害につながっています。

気象庁ホームページ「線状降水帯に関する各種情報」より線状降水帯の図
気象庁ホームページ「線状降水帯に関する各種情報」より引用

予測精度の向上に向けて

  • 熱海市での甚大な被害を含めた度重なる豪雨災害をふまえ、政府は線状降水帯の予測精度を向上させる方針を決定しました。
    その一つとして、気象庁を中心に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や各大学、研究機関が共同で、「オールジャパン」のもと線状降水帯の発生メカニズムに対する集中観測を行います。集中観測は日本列島が梅雨入りする6月から、九州を中心とする西日本で様々な観測が実施されます。

    RESTECはJAXAと協力し、熊本地方気象台、長崎大学における観測機材の設置支援、観測データの取得、送信にかかわるネットワーク環境の構築・運用、観測ポータルウェブサイト「JAXA 線状降水帯集中観測モニタ」の開発支援、運営を行っています。

    なお、線状降水帯集中観測実験の詳細については、JAXAの「線状降水帯の機構解明に関する気象庁気象研究所との共同研究に基づく集中観測や衛星データ提供の開始について」をご覧ください。
  • 長崎大学へ設置したMRRとディスドロメータ
    長崎大学へ設置した観測機材 マイクロレインレーダとディスドロメータ

気候・気象分野へのRESTECの貢献

RESTECは線状降水帯集中観測以外にも、降水を3次元に観測する衛星、全球降水観測計画(GPM)主衛星の校正検証やアルゴリズム開発、衛星全球降水マップ(GSMaP)アルゴリズム開発、Webサイトの開発支援・運用、雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE) 衛星のアルゴリズム開発支援といった、気候・気象分野の衛星に関する様々な業務を行っています。

今後も、リモートセンシングにおける気候・気象分野の研究開発を継続すると共に、蓄積した経験を生かして技術の発展に貢献します。

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