海洋

広大な海をグローバルに、身近な海をローカルにとらえる

  • 地球は約7割が水でおおわれた水の惑星です。周りを海に囲まれた海洋国家である日本にとって漁業や物流、離島保全や環境問題などの観点から、海の状態を把握することはますます重要になっています。
    地球観測衛星は広大な海を「広く、詳しく、定期的に」調べることを可能にする、優れた道具です。
  • 山之口 勤
    ALOS系解析研究グループ グループリーダー 山之口 勤

北極海航路 -船舶の安全かつ経済的な運航に寄与する海氷観測

近年、北極海の海氷が縮小し、2012年9月には衛星観測史上最小を記録しました。海氷の縮小は気候変動面で危惧される一方、北極海航路の実用化をもたらしつつあります。北極海航路は従来の南回り航路に比べ、時間の短縮と燃費の節約を可能にします。資源の宝庫シベリアからの資源搬出への利用も期待されることから、世界の視線が北極海に集まっています。

しかしながら、北極海における船の進行には、常に海氷をモニターすることが不可欠です。ここで地球観測衛星の出番です。衛星データを使うことにより、海氷の状況を広域にわたって細部まで把握することができます。この衛星の情報を気象情報と統合利用することで、航路全域にわたる短期・中期・長期の海氷予想を行う試みが進もうとしています。

氷には1年で融ける一年氷と1年以上存在する多年氷があります。地球観測衛星を使えば氷の種類を見極めることもでき、刻一刻と変わる海氷の状況に応じた運航計画に応用できます。また、船舶からの油流出が与える環境汚染など海の環境監視への活用も期待されます。

北極海航路/日本と欧州を結ぶ海上航路は、通常パナマ運河を通る「南回り航路」(図中赤色)が使われています。ユーラシア大陸の北を通る北極海航路(青色)を利用できれば、約2/3の航海日数ですむことから、大幅な日数の短縮と燃料の節約が可能になります。またソマリア近辺を通らないことから海賊の被害も少なく、氷が少ない夏期においては、ビジネスとして北極海航路を活用する気運が世界的に高まっています。