高橋 桂子(海洋研究開発機構)
近年、狭い地域においてたくさんの雨がまとまって降る集中豪雨が多発しています。集中豪雨は都市からの人工排熱や建造物に蓄積される熱などによるヒートアイランド現象が原因の一部とされていますが、今後温暖化が進み、ヒートアイランド現象がさらに進んだ場合、この集中豪雨がどのように変化していくのかが懸念されています。集中豪雨の原因となるヒートアイランド現象は、都市に緑や水辺を増やす等の対応によって緩和できると考えられており、これらの対応は都市計画等にも組み込まれています。
本研究では5m毎に気温、湿度、風をシミュレーションすることによって都市の熱環境を詳細に予測し(図1)、今後温暖化が進んだ時に、集中豪雨がもっと激しくなるのか、そしてその頻度が上がるのかを予測しました。また、将来にわたってどのように豪雨が降るかをシミュレーションし、そこから起こりうる水の氾濫等の災害を予測しました。これらの結果をもとに、都市において緑や水辺環境をどこにどれだけ作ればヒートアイランド現象が緩和できるのか、緩和できたことによって、将来の豪雨がどれだけ減るのかを定量的にシミュレーションしました。
このようなシミュレーションを行った結果、どのような対策を取っておけば、将来温暖化した時に豪雨の被害を軽減できるかということが具体的に分かるようになりました。
このシミュレーションの結果は、現在、東京都の公園計画、あるいは川崎市の風の道の計画といった、都市計画に利用されています。(図2)
地球温暖化の進行とエルニーニョ、インド洋ダイポールなどの気候変動現象が変化するなかで、安全・安心な都市環境を構築するためには、都市に特徴的なヒートアイランド現象や都市型集中豪雨を様々な角度から分析し、総合的な視点から適応策を考える必要があります。都市、臨海、港湾域を統合した領域としてとらえ、領域間の相互関係を活かした「水と緑」による適応策をシナリオとして提示します。シミュレーションによる定量的評価を基盤とした適応策シナリオの情報発信は、世界に先駆けたユニークなものです。予測精度を向上するためのデータベース構築とデータ同化技術の開発、超高解像度の再現・予測シミュレーションモデルの研究開発を行い、さらに多くの都市域への応用展開を目指します。
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