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日本海沿岸域における温暖化に伴う積雪の変化予測と適応策のための先進的ダウンスケーリング手法の開発

木村 富士男(海洋研究開発機構)

研究領域
研究テーマ
1:日本海沿岸域における温暖化に伴う積雪の変化予測と適応策のための先進的ダウンスケーリング手法の開発
研究者インタビュー



  研究目的  対象地域と実施体制  研究成果  各年度の主な成果  発表論文  (参考)研究構成  

研究目的

 将来の積雪の変化を予測し、地域社会が雪の変化に対応できる将来計画を立てる上で参考となる情報を発信すること。

研究地域と実施体制

対象地域
日本海沿岸地域(富山県)
実施体制
共同研究参画機関: 富山県環境科学センター、秋田大学
協力連携機関: 気象庁気象研究所
日本海沿岸域の積雪
研究成果

 我が国の日本海側は世界でも有数の豪雪地帯です。毎年雪による災害で多くの人が亡くなっています。また、交通障害による経済的な損失も小さくありません。将来地球温暖化が進むと雪はどのように変化するのでしょうか? 本研究では、将来の積雪の変化を予測し、地域社会が雪の変化に対応できる将来計画を立てる上で参考となる情報を発信することを目的としています。特に富山県での雪の将来予測とその社会的影響に焦点を当て、研究を進めてきました。

 地球全体の気候変化予測には大気海洋結合大循環モデル(C G C M; atmosphere-ocean Coupled General Circulation Model)が用いられています。しかしながら C G C M は世界全体を扱っているため、地域的に詳細な気候の変化は大雑把にしか予測できません。そこで、日本付近を拡大した予測計算が必要になります。この計算をダウンスケールと呼びます。我が国の雪のように、地形の影響を強く受け、日本海側と太平洋側で大きく異なる現象を扱うには必須の手法です。本研究ではダウンスケールの誤差を詳しく調べ、その誤差を縮小する手法を確立しました。この手法は非常に注目されており、海外の代表的な研究機関でも利用されています。

 本研究でコンピューターグラフィックスを使って作成した富山の積雪の季節変化を、2000年代と2030年代で比べてみると、2030年代には積雪域が海岸から大きく後退しているのが分ります。(図1)また、降雪量の変化の予測では、年間降雪量は2030年代には現在に比べて40%程減少するのに対して、6時間の最大降雪量は20%しか減りません。(図2)このことから2030年代では温暖化により1年間に降る雪の量が現在より減ったとしても、雪害を発生させる豪雪はあまり減少しないことが分りました。

 内閣府や国土交通省の資料によると、風水害や地震津波などの自然災害の中で、雪害による年間の死亡者数は平成5年から24年までの20年間で、9回も1位になっています。死亡者の多くは屋根の雪下ろし時などの事故によるもので、そのうちの約70%が65歳以上の高齢者です。我が国では少子高齢化がさらに進むと考えられる事から、雪害によるリスクは今後増大する危険性が考えられます。

 本研究では、社会的な対応を考える上で有用と思われる雪を中心とした予測情報を分りやすくお伝えできるインターネットのページを作成中です。平成26年度中には公開されますので、是非ご活用下さい。


地形情報出典: カシミール3D、国土地理院 数値地図50mメッシュ(標高)、国土数値情報(流路データ) 国土交通省
図1 数値モデルによる積雪変化予想のコンピューター描画
 現在に比べて、2030年代には、2月でも低地には雪が積もりにくく、5月には山麓の積雪が顕著に減少することが分かります。なお、積雪変化の予想結果は、予想方法により多少異なります。



図2 富山県周辺の100m以下の平地における積算時間別の年最大降雪量および年間総降雪量の変化

各年度の主な成果


発表論文


(参考)研究構成

 積雪量は気候変動に対して敏感であり、その変化は水資源に大きな影響を及ぼすだけでなく、農業、レジャー産業、生活環境などの人間生活や生態系にもさまざまな影響を与えます。
 そこで、積雪の変化に対する適応策立案に必要な、地域的に詳細な高解像度の地域気候モデルによるダウンスケーリング手法を開発します。

研究テーマ1:日本海沿岸域における温暖化に伴う積雪の変化予測と適応策のための先進的ダウンスケーリング手法の開発
不確実性の評価手法および超高解像度ダウンスケーリング手法の開発
・地形によって大きく異なる積雪を把握するため1-2km格子を目標に高解像度のダウンスケーリング手法を開発、及び手法の信頼性を確認。
領域機構モデルによる1980年代の2月降水量の解像度比較
ダウンスケーリング手法の検証
・降水や積雪深などの地上気象観測データをもとにした診断型積雪分布モデルにより、ダウンスケーリングに用いる領域気候モデルを検証。
・検証結果のフィードバック・新規分野への利活用
適応研究に資するダウンスケーリング情報の伝達方法の開発
・水資源や水管理、農業、生態系などの分野から開発したダウンスケーリング手法が活用できる問題を選定。気候予測に関する要求を集約し、適応策の立案・検討に利活用可能となるような手法を開発。
スキー場に雪がない
温暖化シミュレーション情報の提供 ・水資源や水管理の適応策立案に利用可能な情報
・生活空間スケール(交通、レジャー産業、農業、生態系ほか)の適応策立案の科学的根拠
雪に関連する幅広い分野(水資源・水管理、生態系、農業、観光産業等)の
適応策の立案・検討に貢献