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東北地域のヤマセと冬季モンスーンの先進的ダウンスケール研究

岩崎 俊樹(東北大学)

研究領域
農林漁業
研究テーマ
1:局地気候の研究 (ダウンスケールのための物理過程スキームの改良と局地循環の研究)
2: 局地気象予測手法の研究(ダウンスケールのためのデータ同化手法の開発)
研究者インタビュー



  研究目的  対象地域と実施体制  研究成果  各年度の主な成果  発表論文  (参考)研究構成  

研究目的

(1)東北地方の気候に対する地球温暖化の影響と東北農業の適応策を検討すること。
(2)気象予測情報の農業利用を高度化し、異常気象に対する適応能力を高めること。

研究地域と実施体制

対象地域
青森県、岩手県、宮城県の太平洋地域
実施体制
共同研究参画機関: 弘前大学、岩手県立大学、農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター
協力連携機関: 気象庁気象研究所、仙台管区気象台
東北地方のヤマセ
研究成果

 目的(1)に対しては、気候予測のダウンスケーリングにより、温暖化後(21世紀末)も現在と同じ地域でヤマセが発生しますが(図1)、ヤマセの強度はやや弱まり、発生頻度もやや減少することが分かりました。(使用データ:MIROC5 RCP 4.5, MRI AGCM SRES A1B)

 また、21世紀前半まではオホーツク海高気圧が強く、北日本の気温上昇傾向は抑制されることが示唆されました。また、海上の下層雲の形成過程を調査し、その気候特性が理解できたとともに、数値モデルの下層雲スキームを改良することができました。(マルチモデル解析(CMIP5)と気象庁55年長期再解析(JRA-55)データの比較による。)

 さらに、ダウンスケールの結果に水稲の生育モデルを適用した結果、21世紀末には、現在愛知県などの中京地区で栽培されている高温に強い品種(中京品種)が最大収量を達成する地域が増加することが分かりました。(図2)また、いもち病のリスクはやや減少することが分かりました。

 目的(2)に対しては、東北地域の短期(2日程度先まで)および中期(1週間程度先まで)の予測実験を行い、予報精度の向上を試みました。短期予報の改善のためには、ダウンスケールシステムのためのデータ同化研究を実施しました。側面境界の最適化、ドップラーライダーやGPS衛星の掩蔽観測データの同化研究に取り組みました。

 また、中期予報の改善のためには、アンサンブルダウンスケール予測の精度を調べ、活用法を検討しました。アンサンブル平均予報を利用すると、ヤマセは5日程度先まで予測可能であり、解像度を増やすに従いその自然変動の振幅が現実に近づきました(図3)。

 気象予測を利用した農業気象情報の高度化を目指し、アンサンブルダウンスケール予報を利用した、確率的農業気象情報の作成手法を開発しました。また、農業気象情報のウェブ発信のための農業支援システムを開発し(図4)、受信を希望する一般利用者向けに、高温低温警戒情報、2013年からは収穫適期情報などを提供しました。毎年、アンケートを実施し、システムの改善を行いました。2014年7月には、約2週間にわたり、リアルタイムで確率情報の作成の実証試験を行いました。

 本研究の成果は、パンフレットに取りまとめて東北地方の自治体に配布し、農業気象情報の高度利用に役立てていただく予定です。


図1 ヤマセ発生年の6〜8月の地上気温
左:平年からの偏差(現在の気候) 中:平年からの偏差(将来の気候) 右:将来と現在の差
平年偏差から見ると、温暖化後もヤマセは発生することが分かります。(使用気候モデル:MRI-AGCM)

図2 最大収量を達成する品種の分布
(a) 現在気候(1981-2000年平均) (b) 将来気候(2081-2099年平均)

図3 アンサンブルダウンスケール予報実験における、地上気温のアンサンブル平均値予報の、
ヤマセ型のパターンに対する相関係数と回帰係数。40事例の平均。

図4 葉いもち感染危険度の確率予測の表示例
 アンサンブルダウンスケール気象予測(27メンバーの週間予報、10kmメッシュ)を入力し、BLASTAM (いもち病の予察モデル)で生起を判定し、確率を計算します 。

各年度の主な成果


発表論文


(参考)研究構成

 東北地方の気候はヤマセと冬季モンスーンに大きく影響されるため、東北地方の地球温暖化への適応策を検討するにはヤマセと冬季モンスーンのシミュレーションが欠かせません。特にヤマセは、農業に冷害をもたらし、経済的な被害も甚大です。
 そこで、ヤマセの影響が大きい東北地方の太平洋地域を対象に、ダウンスケール手法の改良とデータ同化手法および農業気象情報作成技術の開発を行います。

研究テーマ1:局地気候の研究(ダウンスケールのための物理過程スキームの改良と局地循環の研究)
1.過去の衛星観測データや再解析データなどを用いて、ヤマセのシミュレーションの鍵となる雲物理、大気海洋相互作用、陸面水文過程の経験的計算手法の改良を行い、ダウンスケールシステムの精度向上を図る。
2.改良されたモデルを利用し、気候モデル結果のダウンスケールを行いヤマセの将来シミュレーションを行う。
3.いくつかの異なる気候モデルのシミュレーション結果を総合的に解析し、気候モデルがダウンスケールモデルの気候シミュレーション精度に及ぼす影響を評価する。
1.ダウンスケールシステムの精度向上 2.ヤマセの将来シミュレーション 3.気候モデルがダウンスケールモデルの気候シミュレーション精度に及ぼす影響の評価
2003年(冷夏)と2004年(暑夏) における宮城県の7月の平均気温、地上風、およびその差の分布。 ダウンスケーリングシステムによって、詳細な地域気候を表現。
研究テーマ2:局地気象予測手法の研究(ダウンスケールのためのデータ同化手法の開発)
1.先端のデータ同化手法を利用しダウンスケールのためのデータ同化システムおよびアンサンブル予測手法を開発する。
2.開発したシステムの精度評価と利用法の開発を実施する。
3.ダウンスケール予測情報を利用した農業気象情報の高度化に関する研究開発を実施する。作物の発育や病害虫の発生などを予測するために必要となる農作物生産地の気象予測情報等(高度農業気象情報)の作成・描画・提供システムを開発する。
1.ダウンスケールのためのデータ同化システムとアンサンブル予測手法の開発  2.開発したシステムの精度評価と利用法の開発 3.農業気象情報の高度化
冷害(イネいもち病)の感染好適条件予測例 実況(左)と数値モデルによる予測(右)
東北地方のヤマセと冬季モンスーンに対する
地球温暖化影響評価と短中期シミュレーションの精度向上に貢献